ダイオードを使った整流回路の解析:常微分方程式とEDAソフトウェア:福田昭のデバイス通信(364) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(18)(1/2 ページ)
今回は、常微分方程式を数値計算によって解く手法と、EDAソフトウェアを活用する手法を紹介する。
(ご注意)今回は前回の続きとなっています。まず前回の内容を読まれることを推奨します。
常微分方程式を4次ルンゲ・クッタ法で解く
前々回の後半で説明したように、レクテナの整流器にはダイオードを使った整流器(整流回路)を使うことが多い。実際のダイオードは、寄生素子である抵抗成分、容量成分、インダクタンス成分を有する。ダイオードの接合容量Cj、ダイオードの直列抵抗Rs、ダイオードを封止するパッケージのインダクタンスLp、パッケージの容量Cpなどである。実際の回路設計と回路解析では、これらの寄生素子による影響を考慮しなければならない。
Visser氏は講演で、以下の4つの解析手法を挙げていた。
- 近似解析:「Ritz-Galerkin(リッツ・ガラーキン)法」による近似解
- 数値解析:「常微分方程式(ODE:Ordinary Differential Equation)」を時間ステップで解く
- EDA(Electronic Design Automation)ソフトウェア:「ADS(Advanced Design System」)」「Qucs(Quite Universal Circuit Simulator)」「QucsStudio」などを使う
- ダイオードをカスケード接続した回路を使う
ダイオードを使った整流回路の主な解析手法[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)
前回は近似解を求める手法「Ritz-Galerkin(リッツ・ガラーキン)法」を解説した。今回は常微分方程式を数値計算によって解く手法と、EDAソフトウェアを活用する手法を簡単に説明しよう。
寄生素子を詳細に考慮した等価回路から常微分方程式を求める
始めは常微分方程式を数値計算によって解く方法である。まず、等価回路を考える。「Ritz-Galerkin(リッツ・ガラーキン)法」の等価回路に比べると、より詳細な等価回路となる。ダイオード接合の寄生容量Cj、ダイオードの直列抵抗Rs、パッケージの寄生容量Cp、パッケージの寄生インダクタンスLpを考慮する。
出力の負荷は、負荷抵抗と負荷容量を並列接続した素子である。なお負荷容量は、直流だと開放(オープン)と見なせる大きさだと仮定する。入力となるマイクロ波電力は、電圧と電流が時間とともに高速かつ周期的に変動する。
ダイオードを使った整流回路の寄生素子を考慮した等価回路(左上)と、常微分方程式(中央下)[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)
等価回路から得られた出力電圧の微分方程式と出力電流の微分方程式を、例えば「4次のルンゲ・クッタ(Runge-Kutta)法」によって適切な時間ステップで計算して解く。
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