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整流回路用ダイオードの解析福田昭のデバイス通信(362) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(16)

今回からは、「6.2 整流器(Rectifier)」に関する講演のサブパートを解説する。

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高周波の交流電流を直流に変換するダイオード整流器

 半導体のデバイス技術とプロセス技術に関する世界最大の国際学会「IEDM(International Electron Devices Meeting)」が昨年(2021年)12月11日〜15日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された。同年12月17日以降は、インターネットを通じてオンデマンドで録画済みの講演ビデオを視聴可能になった。

 IEDMは12日に「ショートコース」と呼ぶ技術講座をプレイベントとして実施した。その1つである「Emerging Technologies for Low Power Edge Computing (低消費エッジコンピューティングに向けた将来技術)」を共通テーマとする6件の講演の中で、「Practical Implementation of Wireless Power Transfer(ワイヤレス電力伝送の実用的な実装)」が極めて興味深かった。講演者はオランダimec Holst Centreでシニアリサーチャー、オランダEindhoven University of TechnologyでフルプロフェッサーをつとめるHubregt J. Visser氏である。

 そこで本講演の概要を本コラムの第347回から、シリーズでお届けしている。なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者のご理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。


講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer(ワイヤレス電力伝送の実用的な実装)」のアウトライン。直訳すると「1. はじめに」「2. 誘導型ワイヤレス電力伝送」「3. 放射型ワイヤレス電力伝送の歴史(黎明期)」「4. 放射型ワイヤレス電力伝送の歴史(現代)」「5. 放射型ワイヤレス電力伝送の基礎」「6. レクテナ」「7. 放射型ワイヤレス電力伝送の応用例」「8. 将来への展望」となる。本コラムの第359回から、「6. レクテナ」の講演部分を紹介している[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 本コラムの第359回(本シリーズの第13回)から、「6. レクテナ」の講演部分(パート)を説明している。「レクテナ」はアンテナとインピーダンス整合回路、整流回路をまとめたデバイスであり、ワイヤレス電力伝送システムでは不可欠の存在だ。アンテナが受信した交流電力を直流電力に変換し、電子機器に供給する役目を担う。


レクテナを解説するサブパートのアウトライン。「6.1 アンテナ」「6.2 整流器」「6.3 直流ブースト変換器」「6.4 直流バック変換器」「6.5 結論」で構成する[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 レクテナを解説するパートは上図のように、6つのサブパートに分かれる。前回までは「6.1 アンテナ」に関する講演概要を解説した。今回からは、「6.2 整流器(Rectifier)」に関する講演のサブパートを説明していこう。

整流用ダイオードの寄生素子を考慮して特性を解析

 ワイヤレス電力伝送システムで、受信側の整流器にはダイオードを使うことが一般的だ。高周波に対応したショットキーダイオードが標準的に採用される。

 ショットキーダイオードはダイオード成分のほかに、寄生素子である抵抗成分、容量成分、インダクタンス成分を有する。ダイオードの接合容量Cj、ダイオードの直列抵抗Rs、ダイオードを封止するパッケージのインダクタンスLp、パッケージの容量Cpなどである。


整流回路用ダイオードと寄生素子[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 そこで実際の回路設計では、これらの寄生素子による影響を考慮しなければならない。直列抵抗による損失があり、寄生容量と寄生インダクタンスによる交流損失がある。整流ダイオードのふるまいは例えば、以下のような手法によって解析する。

  1. 近似解析:Ritz-Galerkin法による近似解
  2. 数値解析:常微分方程式(Ordinary Differential Equation)を時間ステップで解く
  3. EDA(Electronic Design Automation)ソフトウェア:ADS(Advanced Design System)、Qucs(Quite Universal Circuit Simulator)、QucsStudioなどを使う
  4. カスケード接続されたダイオード群

 これらの手法については次回以降で述べたい。

(次回に続く)

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

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