自動車の設計に量子コンピューティングの適用を目指す:BMWとPasqalが協業
自動車メーカーのBMWと、量子コンピューティング技術の開発を手掛けるフランスの新興企業Pasqalは、協業の新たなフェーズに入った。その中で両社は、金属成形のアプリケーションモデルに対する量子計算アルゴリズムの適用性を分析することを目指す。
自動車メーカーのBMWと、量子コンピューティング技術の開発を手掛けるフランスの新興企業Pasqalは、協業の新たなフェーズに入った。その中で両社は、金属成形のアプリケーションモデルに対する量子計算アルゴリズムの適用性を分析することを目指す。
自動車業界は最も厳しい産業環境の一つであるが、量子コンピューティングなら主要な設計ならびに製造上の課題の一部を解決できる可能性がある。McKinseyのレポートによると、自動車は量子コンピューティングにとって主要な“バリュープール(価値が集まっているところ)”の一つであり、2025年ごろには影響力の大きさが顕著になるという。さらにMcKinseyは、2030年には、量子コンピューティング関連技術が自動車業界に大きな経済的影響をもたらし、その規模は20億米ドルから30億米ドルに及ぶとも予測している。
こうした動きの先陣を切ったのはVolkswagen Groupで、2016年に量子コンピューティング研究の専門チームを立ち上げている。
PasqalのCCO(最高商務責任者)であるBenno Broer氏がEE Times Europeに語ったところによると、BMWは2019年からPasqalと協業し、バッテリー向けの化学/材料科学の研究開発を、量子コンピューティングを用いたアプローチで強化することに取り組んできた。
一方で、現在の協業は、2021年後半に実施されたコンペティション「BMW Group Quantum Computing Challenge」の流れをくむものである。このコンペティションでは、特定の4つの課題に焦点が当てられ、量子コンピューティングが従来の計算方法よりも優位になり得ることを示す競争が行われた。
「生産工程における材料変形のシミュレーション」という部門で優勝したのは、後にPasqalと事業を統合することになるQu&Coだった。事業統合の結果、Qu&Coが所有するアルゴリズムの強固なポートフォリオと、Pasqalのフルスタックな中性原子システムが統合され、商用アプリケーションに向けた取り組みが加速した。
Pasqalは、中性原子技術を適用した量子プロセッサの開発を手掛ける。同社は、この量子プロセッサ向けに開発された量子的手法を、デジタルおよびアナログで実装できる方法を開発したという。これにより、競合する超伝導量子プロセッサに比べアプリケーションの効率を30倍高めると主張している。
Pasqalはプレスリリースで、「量子的手法を用いた高精度のシミュレーションを用いることにより、BMWはコストが掛かるビルド/テスト/改善のサイクルを置き換えることができる。従来の古典的な手法では、車両全体を、望ましい精度でシミュレーションするのは複雑過ぎて対応できない。シミュレーションの精度が上がれば、BMW Groupは、より軽量な部品を製造でき、自動車の燃費向上に貢献できるだろう」と述べている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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