東レ、空気電池用イオン伝導ポリマー膜を開発:安全性の向上と長寿命化を可能に
東レは、リチウム空気電池のセパレーターに向けた「イオン伝導ポリマー膜」を開発した。開発したポリマー膜を適用することで、リチウム空気電池の安全性向上と長寿命化を可能にする。
EVや産業用ドローン、UAMなどの航続距離が延びる
東レは2022年6月、リチウム空気電池のセパレーターに向けた「イオン伝導ポリマー膜」を開発したと発表した。開発したポリマー膜を適用することで、リチウム空気電池の安全性向上と長寿命化を可能にする。
リチウム空気電池は、正極に空気極、負極に金属リチウムを用いている。二次電池として一般的なリチウムイオン電池に比べ、「軽量で理論重量エネルギー密度は10倍以上」といった特長がある。ところが、セパレーターに一般的な「微多孔フィルム」を用いると、電池が劣化しやすく安全性も低下するなど課題もあった。
そこで東レは、これまで培ってきた高耐熱アラミドポリマーの分子設計技術を基に、膜中に形成された隣接するサイト間を、リチウムイオンがジャンプして移動する新規ポリマーを設計し、これにLi塩を複合化した。この方法で、イオン伝導性が3×10-5S/cmと高い「無孔イオン伝導ポリマー膜」を作り出すことに成功した。
無孔であるため、これまで課題となっていた「2種の電解液分離性」と「リチウムデンドライト」を原理的に抑制することができ、電池の劣化や安全性の低下を防ぐことが可能になるという。開発した無孔イオン伝導ポリマー膜を用いてリチウム金属電池を試作し、充放電サイクルの試験を行った。この結果、微多孔フィルムを用いたリチウム空気電池に比べ、試作品は安定した電池作動時間が10倍以上になることを確認した。
新開発のリチウム空気電池を、電気自動車(EV)や産業用ドローン、UAM(アーバンエアモビリティ)などに搭載すれば、航続距離を拡大することができるという。
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