子供の置き去り事故防ぐ、IEEのミリ波センサーを日本市場導入:三洋貿易が車載センサー事業を拡大
三洋貿易は2022年6月3日、記者説明会を実施。ルクセンブルクのセンサーメーカーIEEが開発した子供の車内置き去り事故を防ぐミリ波レーダーによる検知センサーを日本市場に導入し、車載センサー事業を拡大すると発表した。
三洋貿易は2022年6月3日、記者説明会を実施。ルクセンブルクのセンサーメーカーIEEが開発した子供の車内置き去り事故を防ぐミリ波レーダーによる検知センサーを日本市場に導入し、車載センサー事業を拡大すると発表した。
「車内置き去りの被害者を生まない社会実現のために」
三洋貿易は1947年創業の専門商社で、モビリティ、ファインケミカル、サスティナビリティ、ライフサイエンスの4市場を中心に事業を展開、2021年9月期の売上高は897億円、2022年9月期には売上高940億円を計画している。特にモビリティ関連を扱う産業資材事業は直近の10年で売り上げを5倍以上拡大しているといい、同社社長の新谷正伸氏は、「ここ数年の成長ドライバーの1つであり、今後も最も注力すべきコアビジネス」と語っていた。
産業資材事業ではシートヒーターをはじめ快適性に関わる領域を中心に扱ってきたが、今後はさらに安心安全につながるセンシング領域も注力していく方針。この領域では、これまで着座検知センサーやハンズオフ検知センサーを提供してきた。これに加え今回、IEEが開発したミリ波乗員検知センサーである「VitaSense」および「LiDAS(Life Detection Assistance System)」を日本市場で展開することになった。
子供の車内置き去りによる事故は世界的に問題となっており、欧州では2023年からEuroNCAPの試験項目に子供置き去り検知を追加。2025年以降には子供置き去りを直接検知するタイプのみを評価対象にすることが決まっている。また、米国では2021年5月に車内への置き去りを防ぐための法律「The Hot Cars Act」が下院で提出されるなど法整備が進んでいる。
一方で日本ではこうした規制がなく、また、同社が実施した独自アンケート調査によると、7 割以上のドライバーが、車内での熱中症事故が起こる要因を「保護者の意識が低いから」と回答したという。同社は「日本では現状、子供置き去りは当事者のモラル欠如の問題であると考える傾向が強い。世界の動きと比較して子供の車内置き去りによる事故を仕組みで防ぐという観点で遅れている」と指摘。新谷氏はそうした背景から、「被害者を誰一人として生まない社会の実現を目指すことを決断した」と、今回の事業拡大の理由を述べた。
60GHz、24GHzの2種類のセンサーを投入
VitaSenseは、60GHzレーダーを用いた乗用車向けの子供置き去り検知センサー。IEEは、2020年に量産を開始した「世界初のレーダーによる車内子ども置き去り検知システム」だとしている。60GHzレーダーの特長を生かし、毛布の下で寝ている乳児の呼吸による微細な動きも検知できる高精度を実現。EuroNCAPのプロトコル準拠で、2021年には米国FCC認証を「世界で初めて」(同社)取得したという。サイズは67×48×17mm(コネクター部除く)、重量は45gで、車内天井裏に容易に搭載可能だ。
一方のLiDASは24GHzレーダーを用いた、バス用の子ども置き去り検知センサーだ。サイズは75×45×19mm(センサー部のみ)、重量は45gで、既存の車両に後付けできる。センサー1個で座席2個分の検知が可能なのが特長で、車内での乗員の置き去りを検知しアラームを発する。なお、送信電力は4mWと低いほか、クラウドネットワークを通じてリアルタイム通信およびデータ保存も可能だという。米国では既にスクールバスへの搭載が進んでいるという。
IEEは乗員検知センサーの開発、量産においては30年以上、車内レーダーについても約10年の実績があるといい、同社日本法人IEEジャパンのカントリーマネジャー高橋正輝氏は、その中で培った知見や自動車メーカーや研究機関/大学との共同開発の経験などを強みとして挙げた。
三洋貿易LiDASは2023年の販売開始、VitaSenseは2025年から日系自動車メーカーへの納入開始を目指し、搭載台数目標は2027年までにVitaSenseで年間30万台、LiDASで年間2000台としている。さらに2027年ごろからは健康状態や感情検知するバイタルセンサーも展開していく方針だ。
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