東芝、ダブルゲート構造の逆導通型IEGTを開発:スイッチング損失を24%低減
東芝デバイス&ストレージと東芝は、ダブルゲート構造を採用することでスイッチング損失を低減した、耐圧4500Vの逆導通型IEGT(電子注入促進型絶縁ゲートトランジスタ)を開発したと発表した。2025年以降の実用化を目指す。
MGとCGを設けて、導通損失とスイッチング損失の関係を改善
東芝デバイス&ストレージと東芝は2022年6月、ダブルゲート構造を採用することでスイッチング損失を低減した、耐圧4500Vの逆導通型IEGT(電子注入促進型絶縁ゲートトランジスタ)を開発したと発表した。2025年以降の実用化を目指す。
IEGTは、高耐圧や大電流動作といった特長を持ち、大容量インバーターや高電圧直流送電(HVDC)システムなどの用途に採用されているという。ところが、導通損失を低減させるとスイッチング損失が増加するという課題もあった。
そこで今回、メインゲート(MG)とは別に、ホール制御型のコントロールゲート(CG)を設けたダブルゲート構造の逆導通型IEGTを開発した。従来のシングルゲート構造を採用した製品と比べ、導通損失を増やさずにスイッチング損失を低減できるという。
開発品は「IEGTモード」時に、ターンオフ時にMGより先にCGをオフとする。これによって、基板中に蓄積されていたホールを少なくし、ターンオフ損失を減らすことができる。一方、「ダイオードモード」時には、逆回復の直前にMGとCGを同時にオンする。これによって、基板中に蓄積された電子が少なくなり、逆回復損失を削減できるという。
試作したダブルゲート構造の逆導通型IEGTとゲート制御技術を組み合わせ、その特性を評価した。この結果、シングルゲート構造の従来品と比べ、ターンオフ損失を24%、ターンオン損失を18%、それぞれ低減することができた。また、逆回復損失は32%も低減したという。これらの測定データから、開発品は導通損失を増加させずにスイッチング損失を24%も低減できることを確認した。
関連記事
- 車載用アナログIC向けプラットフォームを開発
東芝デバイス&ストレージとジャパンセミコンダクターは、不揮発性メモリ(eNVM)を混載できる車載用アナログIC向けプラットフォームを開発した。2022年12月より、同プラットフォームを用いて開発した車載向けICのサンプル出荷を始める予定。 - 東芝が物体検出AIを開発、画像1枚を登録するだけ
東芝は、未学習の物体が映った画像1枚を登録すれば、新規の物体でも高い精度で検出できる画像認識AI「Few-shot物体検出AI」を開発した。製造現場や流通現場での活用に向けて、2023年度中の製品化を目指す。 - 東芝D&S、32ビットマイコン群に21製品を追加
東芝デバイス&ストレージは、Arm Cortex-M3コアを搭載した32ビットマイコン「TXZ+ファミリー アドバンスクラス」として、「M3Hグループ」21製品の量産を始めた。民生機器や産業機器におけるメイン制御、モーター制御などの用途に向ける。 - 手のひらサイズで計測距離300mの「LiDAR」を開発
東芝は、大きさが手のひらサイズで最長300mの距離計測を可能にする「LiDAR」を開発した。投光器を小型にできる「モジュール実装技術」および、全ての投光器を同じ向きにそろえる「モーター制御技術」を新たに開発することで実現した。 - 3相ブラシレスDCモーター用プリドライバーICを開発
東芝デバイス&ストレージは、ホールセンサーレス制御で正弦波駆動方式の3相ブラシレスDCモーター用プリドライバーIC「TC78B011FTG」を開発、量産出荷を始めた。サーバファンやコードレス掃除機に採用される吸引モーターなどの低振動/低騒音化を可能にする。 - パワー半導体研究開発に1000億円、東芝の半導体戦略
東芝は2022年2月8日、会社分割後にできる2社の事業戦略に関する説明会を行った。デバイス&ストレージ事業をスピンオフする「デバイスCo.」では、シリコンパワー半導体のラインアップ拡充やSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)デバイス開発を加速し、パワー半導体の研究開発だけで5年間に1000億円を投入する計画などを明かした。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.