東芝が物体検出AIを開発、画像1枚を登録するだけ:新しい物体でも高い精度で検出
東芝は、未学習の物体が映った画像1枚を登録すれば、新規の物体でも高い精度で検出できる画像認識AI「Few-shot物体検出AI」を開発した。製造現場や流通現場での活用に向けて、2023年度中の製品化を目指す。
再学習が不要な登録型で、46.0%の検出精度を達成
東芝は2022年5月、未学習の物体が映った画像1枚を登録すれば、新規の物体でも高い精度で検出できる画像認識AI「Few-shot物体検出AI」を開発したと発表した。製造現場や流通現場での活用に向けて、2023年度中の製品化を目指す。
撮影した画像から人や物体を検出するための画像認識AI技術は、製造や物流の現場において、生産性や品質、作業効率の改善につながることから、さまざまな現場で導入が検討されている。
ところが、製造ラインなどにおいて検出対象となる部品などが高い頻度で変更されたり、新規商品への対応が求められたりする場合、再学習のために大量の画像と正解情報を用意する必要があった。学習のための時間も必要となる。一方、再学習が不要な登録型と呼ばれる方式もあるが、従来手法では実用レベルの検出精度を実現できない、などの課題があった。
AIは一般的に、対象物体が映る領域だけを物体候補として抽出する深層モデルを学習する。この方式だと、画像や映像に検出したい物体が映っていても、正解が付与された物体以外は背景として扱うため、そのままでは検出できないという課題があった。
これに対し、東芝のFew-shot物体検出AI技術は、これまで背景と認識していた任意の物体を含め、形状を自動的に学習する独自の方式を採用した。このため、検出したい物体が映った1枚から数枚の画像を登録しておくだけで、新しい物体でも現場で再学習をすることなく、検出することができるという。学習した物体と見え方が異なる場合でも、候補として検出することが可能である。対応する時間が1秒未満で済むのも特長の1つ。
従来の登録型で深層モデルを再学習しない方式だと、検出精度が21.2%程度と低く、実用レベルとして十分ではなかったという。これに対し、東芝方式の検出精度は、46.0%と大幅に向上した。この値は再学習不要な登録型において世界最高レベルの精度だという。
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