強誘電体メモリとEPROM、相変化メモリの始まり(1950年代/1960年代):福田昭のストレージ通信(217) フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表(1)
フラッシュメモリに関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット」で、フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表が公開される。この歴史年表が、とても参考になるので、今回からその概略をシリーズで紹介していく。
「フラッシュメモリサミット(FMS)」の会場に掲げられた歴史年表
フラッシュメモリに関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」の会場では最近、「Flash Memory Timeline」の名称でフラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表を壁にパネルとして掲げるようになっていた。現在は、FMSの公式サイトからPDF形式の年表をダウンロードできる(ダウンロードサイト)。
この年表は1952〜2020年までの、フラッシュメモリと不揮発性メモリに関する主な出来事を記述している。とても参考になるので、その概略をシリーズで紹介したい。なお原文はすべて英文なのでこれを和文に翻訳するとともに、参考になりそうな情報を追加した。また原文のすべての出来事を網羅しているわけではないので、ご了承されたい。
1950年代に始まった半導体不揮発性メモリの歴史
世界で初めての半導体不揮発性メモリは、1952年4月に誕生した。米国マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)の大学院に在籍していたDudley Allen Buckが、執筆した修士論文で強誘電体がメモリとスイッチに応用できることを指摘した(参考記事:強誘電体メモリ研究の歴史(前編)〜1950年代の強誘電体メモリ)。
1955年には米国ベル電話研究所のJ. R. Andersonらが256ビットの強誘電体メモリを試作した。強誘電体にはチタン酸バリウム(BaTiO3)を選択した。この材料は動作が安定しないという弱点を抱えおり、解決されることがなかった。このため強誘電体メモリの研究開発は事実上、休止状態になる。
1960年代には浮遊ゲート技術と電荷捕獲技術が考案される
1960年代になると、浮遊ゲート(フローティングゲート)技術と電荷捕獲(チャージトラップ)技術が考案される。前者は米国フェアチャイルドのC. T. Sahが、後者は米国カリフォルニア大学バークレー校のDov Frohman-Bentchkowsky(後にインテルに入社)が構想した。
1967年にはベル電話研究所のDawon KahngとSimon M. Szeが浮遊ゲートをMOS FETに導入した不揮発性メモリを試作する。この成果を基に、インテルのDov Frohman-Bentchkowskyは1970年に世界初のEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)を開発する。EPROMは、フラッシュメモリの原型と言える不揮発性メモリだ。
1960年代後半の重要な出来事は、相変化メモリの発明だろう。1968年にStanford R. Ovshinskyが「オボニックメモリスイッチ(Ovonic Memory Switch)」を発表した。オボニックメモリスイッチはカルコゲナイド合金の相変化に着目したデバイスである。Ovshinskyは相変化がメモリやスイッチなどに応用できることを示した。
1970年には、OvshinskyのチームとインテルのGordon Mooreが共同で、電子専門誌「Electronics」に相変化メモリの論文を寄稿した。半導体メモリのベンチャー(当時)であるインテルが、相変化メモリにも興味を抱いていたことがうかがえる。
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