車載イーサネットテストの先駆的企業が日本展開を強化:独Technica Engineering(4/4 ページ)
クルマの自動化/電動化が加速する中、既存技術に比べて高速大容量な通信が可能となる車載イーサネットの採用が進んでいる。この技術の黎明期からテスト/検証製品の開発やコンサルティングサービスなどを手掛けてきたのが、ドイツのTechnica Engineeringだ。今回、同社の事業開発部長、Erick Parra氏に事業内容や強み、新製品の概要などを聞いた。
100/1000BASE-T1対応イーサネットスイッチ「EES」
こうした高まる要求に向けた製品の1つとして、同社が今回新たに提供を開始したのが、AVB/TSN機能を備えた100/1000BASE-T1対応のイーサネットスイッチ「EES」だ。EESは、最大8台の100/1000BASE-T1車載イーサネットベースデバイスに接続しループすることができる製品。また、シングルタグ付きVLAN(IEEE 802.1Q)とダブルタグ付きVLAN(IEEE 802.1Q-in-Q)を使用して、仮想ポイントツーポイント接続を確立する。
Parra氏は、「ユーザーインタフェースや操作説明は非常にシンプルで、時刻同期の機能も大きく拡張した。エンジニアは、オーディオとビデオの機能を持つ非常に複雑なスイッチを、すぐに使いこなすことができる」と語った。
また、製品の特長について、「タイムドメインで操作できるデバイスは市場に存在せず、時刻同期はポイントツーポイントでしか動作しない。EESは8ポートあるため、全く別の時間同期ユニットを持つ4つの異なるペアを作ることができる。また、PTPv2と車載プロファイルのgPTPという異なる2つの時刻同期規格を1つのデバイスにまとめたのも、とてもユニークな点だ」と強調した。
EESは独自のトラフィックコントロール機能も備えている。「複数のポートから1つのポートに多くの通信ストリームが入ってくる可能性があるため、スイッチがどのパケットの優先度が高いか、どのパケットを今送るべきか、あるいはどのパケットは待てるかを判断できるようになっている」という。このほか、例えばセンサーデータのうちそれほど重要ではないものを除く高度なフィルタリング機能も搭載する。
VLAN、ポートミラーリング、転送またはフィルタリング、ポートセグメンテーションなどの各種機能はWebサーバから簡単に構成可能だ。なお、EESは、「Rosenberger H-MTDコネクター」「TE Connectivity MATEnet コネクター」および「RJ45コネクター」の3種類をラインアップしている。
また、同社は今後マルチギガビットイーサネット対応のメディアコンバーター、キャプチャーモジュールおよびスイッチベースの製品も提供を進めていく予定だとしている。
日本市場は『重要な鍵』
同社は日本では2017年からガイロジックを販売代理店として展開してきた。車載イーサネットという新しい技術を専門とする同社は、「日本市場はドイツ市場と比べ、やや保守的であると認識している」と分析するが、このEESの日本国内販売を2022年に開始することとした。
Parra氏は、日本市場について「世界有数の自動車市場がある日本は、われわれにとって戦略的に重要な『鍵』となる市場であり、常に注目してきた。ここ数年で車載イーサネットの研究が活発化し、標準化も進みつつあるとみており、日本メーカーがこれから本格的に導入に乗り出していくとみている。そのため、日本市場でわれわれの認知度を上げ、独自の製品/サービスを展開していきたい」と期待を述べていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- NXP、車載用プロセッサ「S32Z/S32E」を発表
NXP Semiconductorsは、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)に向けた車載用リアルタイムプロセッサとして、車両制御を主なターゲットにした「S32Zファミリー」と「S32Eファミリー」を発表した。 - TSNスイッチ搭載のMCU、既存工場のIoT化を容易に
NXP Semiconductors(以下、NXP)は2022年5月3日(オランダ時間)、ギガビットTSN(Time Sensitive Networking)スイッチを搭載したクロスオーバーMCU「i.MX RT1180」を発表した。 - テレダイン・レクロイ、テストソフトウェアを発表
テレダイン・レクロイは、次世代車載イーサネット規格「MultiGBase-T1(IEEE 802.3ch)」に対応した自動コンプライアンステスト・ソフトウェア「QPHY-MultiGBase-T1」を発表した。 - 低静電容量、狭公差の車載イーサネット向け高ESD耐量バリスタ
TDKは2022年3月22日、小型、低静電容量および狭公差の車載イーサネット向け高ESD(静電気放電)耐量チップバリスタ「AVRH10C101KT4R7YA8」を開発したと発表した。ESD耐量は2万5000Vの高耐圧で、静電容量範囲は4.7±0.57pFという狭公差を実現。OPEN Allianceの、車載イーサネット100BASE-T1向けESD保護部品の規格に準拠している。 - 豊富なアクセラレーターを備えた最新車載マイコン
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(以下、インフィニオン)は2022年1月18日、独自コア「TriCore」を搭載した車載マイコン「AURIX」の新ファミリーとなる「AURIX TC4x」を発表した。 - Mobileyeが2022年に上場へ、Intelが車載に本腰
Intelは、自動運転事業部門のMobileyeをスピンオフし、2022年のどこかのタイミングで上場する計画だ。複数のアナリストによると、MobileyeのIPO(新規株式公開)により、Intelは車載用チップの領域にさらに投資できるようになるという。