高機能フィルム市場の成長率、2022年は足踏み状態:矢野経済研究所が世界市場を調査
2022年の高機能フィルム市場は、応用機器メーカーの生産調整などにより成長率が鈍化し、足踏み状態にある。今後は5G(第5世代移動通信)関連向けなどの需要が拡大し、2023年には市場が回復する見通しである。矢野経済研究所が調査した。
2023年には市場が回復、SA方式への移行で5G関連に期待
矢野経済研究所は2022年8月、ディスプレイや電子部品などに用いられる高機能フィルムの世界市場を調査し、製品セグメント別の動向などを発表した。応用機器メーカーの生産調整などにより、2022年の高機能フィルム市場は成長率が鈍化し足踏み状態にある。今後は5G(第5世代移動通信)関連向けなどの需要が拡大し、2023年には市場が回復すると予測した。
調査対象となった高機能フィルムは、ディスプレイや電子部品などに用いられる「PETフィルム」や「フレキシブルディスプレイ関連フィルム」「5G/ビヨンド5G関連フィルム」「MLCC(積層セラミックコンデンサー)リリースフィルム」などである。この中から今回は、PETフィルム、FCCL(フレキシブル銅張積層板)用PIフィルム、MLCCリリースフィルムの出荷数量について、増減率のみ公表した。調査期間は2022年5〜7月である。
調査結果によれば、FCCL用PIフィルムは2022年見込みが5.2%の増加で、2023年も5.1%増と予測した。MLCCリリースフィルムは2022年見込みで1.6%増と微増にとどまるが、2023年には14.2%の増加を予測した。PETフィルムは2022年見込みで0.6%の減少となるが、2023年には4.6%増に回復する見通しである。
2022年の高機能フィルム市場は、5月以降に大きく流れが変わったという。韓国メーカーがTVやスマートフォンの生産計画を下方修正した。これを受けてディスプレイパネルや電子部品メーカーも生産調整に入った。こうした中で、FCCLやMLCCはその用途が広く、ディスプレイメーカーが行った生産調整の影響は軽微にとどまったとみている。
高機能フィルム市場で今後期待できるのが5G関連向けである。国内外の通信事業者は、その多くが2024〜2025年頃にもスタンドアロン(SA)方式への移行を計画している。このため、端末機器や基地局装置向けに、サブ6/ミリ波に対応する低誘電FPC(フレキシブルプリント基板)の需要が拡大し、MPI(改良PIフィルム)やLCP(液晶ポリマー)といった基板材料が大きく伸びると予想した。
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