データセンター用RISC-Vチップレットの製品化を加速:米新興企業のVentana(2/2 ページ)
米国のVentana Micro Systems(以下、Ventana)は、2021年にステルスモードを脱して以降、パートナーや潜在顧客との関係構築を精力的に進め、RISC-Vベースのチップレットのけん引力を生み出してきた。米国EE Timesは、2022年7月10〜14日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された「59th Design Automation Conference(DAC 2022)」でBaktha氏に独占インタビューを行った。
各国で関心高まるRISC-Vチップレット
Ventanaは、どのようなけん引力を持っているのだろうか。さらに5500万米ドルを同社に投資することを投資家に納得させた理由は何なのだろうか。
Baktha氏は、「Ventanaは、アジアの主要市場、特に台湾と韓国、日本への扉を開く新たな投資家を獲得した」と述べている。ただし、この投資家の名前は明らかにしていない。
市場の反応に関しては、特に中国と米国のハイパースケーラーがVentanaのソリューションに熱い期待を寄せているという。一方、欧州は、高性能コンピューティングにおけるRISC-Vチップレットに大きな関心を示している。
「中国はRISC-Vに対する関心が高く、特にサーバクラスの製品を求めているため、当社の成長をけん引している。中国はデータセンターに注力しており、当社は中国の全ての主要ハイパースケーラー企業と提携しているが、その全てがRISC-Vチップレットに関心を持っている。ある大手クラウドプロバイダーは、間違いなくRISC-Vを採用すると思われる。当社は、中国のハイパースケーラーと協力してインフラソリューションの開発に取り組んでおり、同ソリューションでRISC-Vをサーバに展開することを検討している」(Baktha氏)
Baktha氏は、「米国は、2023年後半にデータセンターインフラで最初の大きな展開が予想される」と述べている。
Ventanaに関心を寄せているのは、データセンターだけではない。Baktha氏によると、ある自動車メーカーが次世代ADAS(先進運転支援システム)用プロセッサの開発で同社と“深く関わっている”という。同氏は、「彼らはRISC-Vが差別化を促進することを認識しており、ディープマイクロアーキテクチャで当社と提携している」と説明。さらに、「極東の大手企業からも同様の関心が寄せられている」とも付け加えた。
「他の分野では、Ventanaは、チップセットを(RISC-Vへ)移行することを検討している5G Open RANの主要プレーヤーや、Chromebookなどのクライアントデバイスに本格的に進出している」と同氏は付け加えた。
このように、Ventanaは、RISC-Vベースのチップセットに注力することが、データセンターや自動車、5Gにおいて直面するHPCの課題のいくつかに対処する鍵となることを強く示している。Moor Insights&StrategyのCEO兼チーフアナリストであるPatrick Moorhead氏は2022年初頭に、次のように述べた。「チップレットは、高性能、無限の柔軟性、市場投入までの時間の利点を提供することから、半導体業界が向かうべき方向である」(同氏)
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
SiFiveが日本支社設立へ、いずれは開発も視野に
RISC-VプロセッサコアIP(Intellectual Property)を手掛ける米SiFiveが、日本法人設立の準備を進めている。早ければ今後1〜2週間以内にも設立が完了する見込みだ。SiFiveジャパンの代表取締役社長は、Xilinx(AMDが買収)の日本法人ザイリンクスジャパンの代表取締役社長を務めていたSam Rogan氏である。ハードもソフトも全てオープンソースのRISC-V開発キット
カナダに拠点を置くOpenHW Group(以下、OpenHW)は2022年6月21日、IoT(モノのインターネット)向けのRISC-Vベース「CORE-V MCU」の開発キットを発表、ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2022」(2022年6月21〜23日)でその概要を紹介していた。同キットはハードウェア、ソフトウェアおよび開発ツールなど、全てオープンソースなのが特長だ。RISC-Vを取り巻く環境が大きく変化した1週間
2022年2月7日の週はRISC-Vエコシステムにとって、非常に重要な1週間だったといえる。一連の発表により、オープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)の注目度が高まったのだ。以下に詳しく取り上げていきたい。IntelがRISC-V Internationalに加盟、投資ファンドも設立
Intelは、「IDM2.0」戦略の拡大を進める一環として、同社のファウンドリーエコシステムに統合可能な技術の開発を支援する10億米ドルの投資ファンドを創設したことを発表した。同社は同時に、新興のRISC-V市場での存在感を高めるための動きも見せており、世界的な非営利団体であるRISC-V Internationalへの加盟も表明した。チップレットが主流になるための2つの要素
現在、データセンターのワークロードが急激な進化を遂げている。計算やメモリ、IOなどの機能が変化しながら組み合わさって、より高い計算密度が求められるようになってきた。このためアーキテクチャは、従来の「One-size-fits-all」型のモノリシックなソリューションから、ディスアグリゲーション(分離)された機能へと移行が進み、特定用途向けとして個別にスケーリングすることが可能になっている。RISC-Vチップレット新興企業Ventanaが3800万米ドル調達
米国カリフォルニア州クパチーノに本社を置くRISC-V関連の新興企業であるVentana Micro Systemsが3800万米ドルの資金調達を発表し、データセンター向けコンピュータをターゲットにしたマルチコアSoC(System on Chip)チップレットの詳細を明らかにした。