シャープ、フロー型亜鉛空気電池の開発を開始:低コストで大容量の蓄電を可能に
シャープは、「フロー型亜鉛空気電池」を用いた蓄エネルギー技術の開発を始めた。再生可能エネルギーの普及促進に向けて、コストを抑えつつ大規模な電力貯蔵を可能にする同技術の早期実用化を目指す。
フロー型方式を採用、「セル」と「貯蔵部」がそれぞれ独立
シャープは2022年8月、「フロー型亜鉛空気電池」を用いた蓄エネルギー技術の開発を始めた。再生可能エネルギーの普及促進に向けて、コストを抑えつつ大規模な電力貯蔵を可能にする同技術の早期実用化を目指す。
カーボンニュートラルの実現に向け、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの普及に期待が高まる。ところが、再生可能エネルギーは気象条件などにより発電量が変動するため、これらを主力電源とするには、蓄電池を用いて電力供給を平準化する必要がある。このため、高い安全性を維持しながら大容量で安価の蓄電池開発が急務になっている。
新たに開発するフロー型亜鉛空気電池は、空気中の酸素を活用して充電や放電を繰り返し行うことができる蓄電池である。蓄エネルギー物質には、安価で供給も安定しているな亜鉛(Zn)を用いる。しかも、蓄電池の充放電を担う「セル」と、セルで充電されたZnを蓄える「貯蔵部」が、それぞれ独立した構造になっている。Znを浸す電解液には、水系の液体を用いた。これにより、発火の可能性が極めて低く、高い安全性を確保できるという。
充放電の原理はこうだ。充電は酸化亜鉛(ZnO)がZnに変化する時に電子を蓄える。放電は空気中に含まれる酸素との作用でZnがZnOに変化する時に、蓄えた電子を放出するため、電気を取り出すことができる。このように、ZnOとZnの変化サイクルを活用することで、繰り返し充電/放電が可能となる。
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