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Micronのアイダホ新工場が、米国のDRAM供給を向上させるIC Insightsアナリストがコメント

Micron Technologyが米国で20年ぶりにメモリ工場を建設する計画を発表したことについて、米国の市場調査会社であるIC InsightsのアナリストBrian Matas氏は「半導体製造を米国で行うことは有益だ。CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)は米国の企業が拡張計画を進めるきっかけになった。米国でIC(集積回路)を現地調達できるようになるのは良いことだ」と述べている。

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 Micron Technology(以下、Micron)は2022年9月1日(米国時間)、米国で20年ぶりにメモリ工場を建設する計画を発表した。同社は、半導体の国内供給を確保するために、10年間で150億米ドルを投資する予定だ。米国の市場調査会社であるIC InsightsのアナリストBrian Matas氏は米国EE Timesに対し、「半導体製造を米国で行うことは有益だ。CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)は米国の企業が拡張計画を進めるきっかけになった。米国でIC(集積回路)を現地調達できるようになるのは良いことだ」と述べている。

 Matas氏は、「この投資は8〜10年にわたって行われ、投資額は年平均約20億米ドルになるとみられる」と指摘している。同氏は、「とはいえMicronは、投資の面では他のDRAMメーカーに後れを取っている。それでも、現地調達できる先進のメモリチップが米国内にあるのは良いことだ」と述べている。

 これは、Micronが計画している複数の米国投資のうち、米国が半導体製造を国内に戻す取り組みであるCHIPS法が2022年7月に可決された後、最初に実施されるものとなる。Micronは今後10年間で、世界各国で製造と研究開発に1500億米ドル以上を投じる予定だという。

 この発表は、世界の半導体メーカーが2022年の残余期間の収益予想を下方修正し、事業拡張計画を縮小するメーカーもある中で行われた。既にEE Timesが報じたように、2022年8月、MicronのCFO(最高財務責任者)を務めるMark Murphy氏は投資家に対し、2023年の増資を削減すると語っている。

 それでも、CHIPS法は、TSMCやSamsung Electronics、Intelなど世界の大手半導体メーカーによる米国への数十億米ドル規模の投資を誘致している。現在、世界の半導体生産量のうち米国が占める割合は約12%で、3分の2以上は韓国や中国などのアジア諸国で生産されている。

アイダホ州の学校にも恩恵

 Micronは、アイダホ州ボイシにある本社および研究開発センターと併設する形でこの工場を建設し、これにより運営効率を高め、技術展開を加速し、市場投入までの時間を短縮する計画だという。また、敷地内に託児所を開設し、アイダホ州の学術機関とのパートナーシップを深めたい考えだ。

 270億米ドル規模の半導体メーカーである同社は、幼稚園から高校までのSTEM(Science、Technology、Engineering and Mathematics)教育プログラムへの投資を拡大し、過小評価されている地方の学生へのアプローチに注力する考えだという。また、ウエスタン・アイダホ大学との提携についても発表し、高度メカトロニクス工学技術などの主要カリキュラムの提供を主導していく予定だ。

 半導体製造の国内回帰は、米国にとって優先事項となっている。

 CHIPS法では、米国の半導体の研究、開発、製造、人材育成のために527億米ドルの予算を組んでいる。内訳は米国内への半導体工場誘致の補助金として390億米ドル(うち自動車や防衛システムで使用されるレガシーチップ向けに20億米ドル)のほか、研究開発と人材開発に132億米ドル、国際情報通信技術のセキュリティと半導体サプライチェーン活動に5億米ドルを含んでいる。また、半導体および関連装置の製造のための資本支出に対して25%の投資税額控除も行う。

 しかし、米国は材料やサービスの調達先を海外に大きく依存しており、グローバルな半導体サプライチェーンを米国内で複製することはできない。Matas氏は、「まだまだ先は長い。海外で製造される製品は依然として多く、(Micronの投資によって)メモリ市場で優位に立てるわけではない」と述べている。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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