Samsungが半導体市場の失速について警鐘を鳴らす:NANDとDRAMの市場は需要が鈍化
メモリ市場は2000年代初期のように、非常に変動の激しい状態にある。当時はEnronを含むいくつかの企業がDRAMの先物取引市場を形成しようとしていた。世界最大のメモリチップメーカーであるSamsung Electronics(以下、Samsung)は、半導体業界が2022年をハードランディング(急激な失速)で終える可能性があると警告した。
メモリ市場は2000年代初期のように、非常に変動の激しい状態にある。当時はEnronを含むいくつかの企業がDRAMの先物取引市場を形成しようとしていた。世界最大のメモリチップメーカーであるSamsung Electronics(以下、Samsung)は、半導体業界が2022年をハードランディング(急激な失速)で終える可能性があると警告した。
Bloombergの報道によると、2022年9月7日(韓国時間)に韓国ピョンテク市にあるSamsungの新たな半導体製造施設で行われたブリーフィングで、同社のデバイスソリューション部門を率いるKye Hyun Kyung氏は、2022年前半以降メモリ市場は劇的に変化していると述べた。なお、同社がそのようなブリーフィングを行うのはまれなことである。
2022年の初めには、2022年後半は前半より良くなるというのが全体的な見方だった。
2022年9月8日に米国EE Timesがコンタクトを取ったSamsungの担当者は、この予測に関するコメントを避けたものの、Samsungが7日にメディアイベントを開催したのは、ピョンテク市の3番目の製造ラインでNAND型フラッシュメモリの生産を始めたと発表するためだったと示唆した。
Samsungの2021年の売上高は2400億米ドルで、そのうち約218億米ドルは半導体事業から生じたものである。同社によれば、ピョンテク市の製造施設の操業規模はこれまでで最大だという。
Kyung氏はコメントで「ピョンテク市の製造拠点は、14nm採用のDRAMや最先端の3D NANDフラッシュから、サブ5nmのロジックソリューションまで、Samsungの主要工場として存在感が急激に高まっている」と述べた。
MicronとSKも需要の鈍化を示唆
Samsungの主要な競合先であるMicron TechnologyとSK hynixも需要の衰えについて示唆した。CNBCは、SK hynixからのニュースを伝えた(参考)。同社はH2サーバメモリチップの需要が鈍化していると見ているという。
メモリ市場は、唐突かつ激しい価格変動で知られている。さらに、ほぼ全てのエレクトロニクス製品には1個以上のメモリチップが搭載されるため、メモリ需要の縮小は、それ以外の半導体製品や、IP&E(コネクター/受動部品/機構部品)コンポーネントにも影響を及ぼす。
これまでに世界の半導体メーカーが発表した、製造施設の建設計画は29件にも及ぶ。いずれも、急速に変化する市場の需要に対応することを目指した動きである。
Bloombergの報道によると、高度なチップ製造に重点的に投資してきた歴史を持つSamsungは、設備投資を着実に維持するつもりだという。
だが、需要の低迷だけがSamsungにとっての逆風ではない。米国政府は、最近成立したCHIPS法の一部である連邦補助金の恩恵を受けている半導体企業に対し、10年間中国でのチップ製造を控えるよう要求している。Samsungは、米テキサス州テイラー(Taylor)に、170億米ドルを投じて工場を建設する計画で、2022年末にも着工する予定だ。
米国政府はまた、AI(人工知能)チップや、最先端チップ向けの製造装置を中国向けに販売することについても制限し、中国の技術的進歩を阻止しようとしている。Samsungは多くの半導体/電機メーカーと同様、チップやスマートフォンなどを巨大な中国市場で販売している。
韓国政府は、今回の制約について、米当局と交渉することを求めている。
TrendForceは2022年9月1日、2022年第3四半期におけるNANDフラッシュウエハーの契約価格の予測を、再び下方修正した(参考)。当初は、価格の引き下げ幅を15〜20%減としていたが、現在は30〜35%減としている。
TrendForceは「2022年第4四半期のNANDフラッシュウエハー価格を予想しつつ、メーカーは市場シェアを維持する戦略をとっているため、NANDフラッシュウエハーの契約価格とスポット価格は、価格崩壊に直面している」と述べている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 3D DRAMからCXLメモリまで、Micronの見解を聞く
2022年8月、米国の半導体支援の法案「CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)」の可決に伴い、400億米ドルを投じて米国での生産活動を拡張すると発表したMicron Technology(以下、Micron)。同年9月1日(米国時間)には、米国で20年ぶりにメモリ工場を建設する計画も発表した。EE Times Japanは、Micronのモバイルビジネス部門でシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるRaj Talluri氏および、Micron本社に取材し、市場動向や新しいメモリ技術に対するMicronの見解について聞いた。 - Micronのアイダホ新工場が、米国のDRAM供給を向上させる
Micron Technologyが米国で20年ぶりにメモリ工場を建設する計画を発表したことについて、米国の市場調査会社であるIC InsightsのアナリストBrian Matas氏は「半導体製造を米国で行うことは有益だ。CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)は米国の企業が拡張計画を進めるきっかけになった。米国でIC(集積回路)を現地調達できるようになるのは良いことだ」と述べている。 - フラッシュメモリ搭載の一般用デジタルカメラが相次いで発売される(1993年〜1996年)
今回は、1993年〜1996年の出来事を取り上げる。一般用のコンパクトデジタルスチルカメラ(略称はコンパクトデジカメ、コンデジ)がフラッシュメモリあるいは小型フラッシュメモリカードによって普及し始めた時期だ。 - SK hynix、1兆5400億円投じ韓国に新工場建設へ
SK hynixは2022年9月6日(韓国時間)、韓国・清州市に今後5年で15兆ウォン(約1兆5400億円)を投じ新工場「M15X」を建設すると発表した。新工場は2022年10月に着工し、2025年に完成予定だ。 - Intelが撤退を公表、3D XPointはどんな遺産を残す?
Intelはこれまで数年間にわたり、NAND型フラッシュメモリとDRAMとの間のストレージ/メモリ階層を実現する技術として、3D XPointメモリの「Optane」を推進してきた。しかし2022年7月、同年第2四半期の業績発表の中で、そのOptane技術の開発を断念することについて、ひっそりと言及した。