高速光無線通信「Li-Fi」が、AR/VRの未来を切り開く:最大220Gbpsの通信が可能(2/2 ページ)
光スペクトルを使用してデータの伝送/受信を行う高速通信「Li-Fi(Light Fidelity)」は、現在まだ初期段階にあるが、米軍がその成長に拍車を掛けている。Li-Fi大手のpureLiFiとSignifyの2社は、米国陸海軍との間で重要な契約を締結し、既存の通信システムにセキュリティレイヤーを追加することによって性能向上を実現していくという。
「最後の3m」でマスマーケットでの拡大を狙う
Banham氏は「防衛は新たな技術が始まる場所になることがよくある。ただ、pureLiFiは世界規模の消費者ブランドや企業ブランド、メーカーと協業しており、それらの企業は当社の技術を特定のユースケースに向けて真剣に評価している。当社は、コネクテッドデバイスに組み込むための製品をマスマーケットに出すことに明確に焦点を合わせている」と述べた。
pureLiFiは2022年2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress (MWC)」で、初となる民生用Li-Fiシステムのデモを実施した。デモはAR(拡張現実)ヘッドセット、スマートテレビ、ダウンライド、スマートフォンを使ったもので、これらは全てLi-Fiでつながっていた。
Banham氏は「pureLiFiでは屋内に焦点を当てている。私はそれを『最後の3m』と呼んでいる」と述べた。米国カリフォルニア州やシンガポールにおいて屋外でLi-Fiのデモを行ったこともあるが、焦点は依然として屋内用デバイスに向けられているという。
pureLiFiは、Li-Fiが直射日光の下でも機能すると主張している。同社は、7万7000ルクスもの太陽光が降り注ぐ屋外でレシーバーをテストしたという。
Li-FiがもたらすVRの未来
民生用Li-Fiのターゲットは、『家庭』を中心としている。
SignifyのGunther氏は「Li-Fiは、スマートグラスなど、増え続けるAR/VR(仮想現実)デバイスに高速かつ低遅延のコネクティビティを提供するソリューションになるとわれわれは考えている」と述べた。同氏によると、そうした軽量かつコンパクトな民生デバイスには、リアルタイムの計算を毎秒マルチギガビットで扱うことが求められているという。このような背景により、Li-Fiが完璧な候補になっているとGunther氏は説明した。
Banham氏は「屋内で消費されるデータの量は大幅に増加している。Meta(旧Facebook)を率いるMark Zuckerberg氏も、『膨大な帯域幅やデータ、パイプが不可欠なメタバースを実現すべく、低遅延、低ジッタ、高帯域幅のデバイスを実現するソリューションが必要だ』と発言している」と語った。
Banham氏は、Li-FiがVRの未来の一部となると考えている。
また、Banham氏は、Li-FiがIEEEによって「802.11bb」として標準化されたことについて、「私が数年前に抱えていたビジョンは、Li-Fiがわれわれが暮らす世界の一部になるというものだった。802.11bbとして標準化されたことで、相互運用がより早く実現、展開されるはずだ」と語った。
【翻訳:田中留美、青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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