酸化ガリウム反転型DI-MOSFETの基本動作を確認:ノベルクリスタルテクノロジー
ノベルクリスタルテクノロジーは、しきい値電圧6.6Vで耐圧1kVの酸化ガリウム反転型ダブルインプランティドMOSトランジスタ(DI-MOSFET)を試作し、その基本動作を確認した。今後は特性の改善などに取り組み、2025年の実用化を目指す。
フルβ-Ga2O3パワーモジュールの実現目指す
ノベルクリスタルテクノロジーは2022年9月、しきい値電圧6.6Vで耐圧1kVの酸化ガリウム(β-Ga2O3)反転型ダブルインプランティドMOSトランジスタ(DI-MOSFET)を試作し、その基本動作を確認したと発表した。今後は特性の改善などに取り組み、2025年の実用化を目指す。
ノベルクリスタルテクノロジーは、防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度に基づき、2019年より「10kV級酸化ガリウムトレンチMOSFETの研究開発」や「反転MOSチャネル型酸化ガリウムトランジスタの研究開発」に取り組んできた。
β-Ga2O3は、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)に比べ、損失が小さくコストも安いパワーデバイスを実現できるという。ただ、ウエハーサイズが4/6インチの量産ラインに導入されている従来の露光装置やドライエッチング装置を用いると、電流が数十Aでダイサイズが数mm角の大型素子を、高い歩留まりで製造するのは難しかった。
そこでノベルクリスタルテクノロジーは、既存の製造装置でも高い歩留まりで製造できる反転MOSチャネル構造を開発することにした。それは、アクセプタ不純物の窒素(N)をイオン注入、活性化熱処理工程を経て添加した高抵抗β-Ga2O3層を、ウエル層に用いる方法である。技術的にまだ確立されていないβ-Ga2O3p型導電層の代わりとなるものである。移動度評価用に作製した長チャネル(LCH=100μm)横型トランジスタの特性を測定したところ、しきい値電圧が6.2VでMOSチャネル移動度は52cm2/Vsとなった。
ノベルクリスタルテクノロジーは、注入する不純物濃度などを変えて反転型DI-MOSトランジスタを作製し、その特性を評価した。N+イオン注入濃度が1×18cm-3ではしきい値電圧が6.6Vとなった。N+イオン注入濃度を3×18cm-3以上にすると、オフ耐圧は1.1kVになることを確認した。
これらの実験により、N+イオン注入をした高抵抗β-Ga2O3層が、p型導電層と同様に「しきい値電圧制御層」や「電流ブロック層」として機能することが分かった。今回試作したDI-MOSFETは、チャネル長が10μmでオン抵抗は153mΩcm2と大きいが、素子を微細化することで、オン抵抗は10mΩcm2以下にできるとみている。
ノベルクリスタルテクノロジーは既に、酸化ガリウムショットキーバリアダイオード(SBD)の製品化に取り組んでいる。今後はDI-MOSFETと組み合わせた「フルβ-Ga2O3パワーモジュール」を開発していく計画である。
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