減ることのない半導体と電子部品の偽造 ―― リスク承知の購入は危険:半導体製品のライフサイクルに関する考察(6)(4/4 ページ)
前回、偽造半導体を購入するまでの過程と、その背景などについて説明をした。今回は、そのような状況において、どのようなプロセスを踏むと偽造半導体を購入してしまう可能性が高まるのか、ということについて解説していく。
再生品という考え方
これら3つの製品を比較すると、互換品を使用することで、製造中止に伴うリスクを軽減させられることは明確であり、この互換品というかたちの一つとして再生品という考え方がある。この再生産品は互換品の一つといえる。その製品自体は、オリジナル半導体メーカーから半導体の製造に関する情報を正規のルートで入手した会社が、その情報を使用して製品開発を行い、入手した製造条件に基づいて製造している。また、製造に関する情報と同様に、オリジナル半導体メーカーより入手した検査方法と検査基準に基づいて検査が行われている。
再生品は、すべてがオリジナル半導体製品と完全同一品というわけではない。それは、同一の製造プロセスが使用できない可能性があるという背景があるためだ。製造中止となる原因の一つに、これ以上製造できないというものがある。半導体の製造技術の進化に伴い、製造設備も進化している。そのために、古い設備は順次廃棄されており、再生産を検討する際に、必要とする製造設備がなくなっていることがある。
このような際に再生産を行う場合は、使用可能な製造技術や設備を選択し、そこで製造できるように製品の設計を変更する。そうしてウエハー製造を行い、オリジナル半導体製品用に作られた試験を実施し問題がないことを確認する。その後、後工程についても、オリジナル半導体製品で設定されている製品仕様に基づいた製造を行う。製品完成後は、本来であればオリジナル半導体製品で使用されている検査機器と同じ設備を使用し、同じテストプログラムを使用して製造した製品の検査を行うが、こちらに関しても、対象となる設備が使用できない場合が多く、別の設備を使用して検査する必要がある。その場合は、オリジナル半導体製品に使用していたテストプログラムとテストボードをオリジナル半導体メーカーより入手して、その情報を基に、利用可能な設備を活用してテストプログラムやテストボードを開発する。
完成後は、新たに作成したテスト装置でオリジナル半導体製品の検査を行い、その結果に問題がないことを確認したのちに、その装置を使用して、新たに製造した半導体を検査する。また、完成した半導体の信頼性試験も並行して実施し、信頼性についてもオリジナル半導体製品と変わらないことを確認したのちに、販売するという方法だ。
このような手法で製造された再生品は、オリジナル半導体製品と同じ仕様となり、単に置き換えて使用したとしても問題なく動作する。また、オリジナル半導体メーカーより認可を受けて製造していることから、その製品の型番も、オリジナル半導体製品と同じ型番を使用することが許されている。
この再生産品というソリューションは、より長期間、継続的に製品を入手するために有効な手段といえるので、製造中止となった製品の入手を検討している方は、一度検討してみてはいかがだろうか。
最後に
半導体応用機器メーカーは、製造中止になった半導体や廃品種に対して積極的にアプローチすることにより、生産中断のリスクを軽減し、偽造半導体に対しても強い立場を取ることができる。半導体製造中止品の代替ソリューションは、さまざまな障害を引き起こす可能性があり、時には隠れた不整合をもたらす。その中には、明らかに認識できるものもあれば、診断が難しいものもある。これらの障害を排除するためには、高い信頼性と費用対効果の大きい選択が必要である。
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