アルムと帝人、次世代医療サプライチェーンの実証試験を開始:RFID活用で医療資源ロスを削減
帝人と医療ICTベンチャーのアルムは2022年11月17日、脳血管内治療計画プログラムと電子タグシステム(RFID)を活用した次世代医療サプライチェーンの実証試験を共同で開始したと発表した。
帝人と医療ICTベンチャーのアルムは2022年11月17日、脳血管内治療計画プログラムと電子タグシステム(RFID)を活用した次世代医療サプライチェーンの実証試験を共同で開始したと発表した。脳血管内治療の現場における治療の質向上と医療資源のロス削減に向けた取り組み。2024年12月までに実証試験を完了し、2025年ごろまでの社会実装を目指す。
脳血管内治療は、脳梗塞や脳動脈瘤などの疾患に対し、大腿部(足の付け根)や肘などからカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、ステントやコイルと呼ばれる医療機器を留置する治療法だ。両社によると、ステントやコイルは高額かつ患者の血管サイズや病状によって使い分けが必要なことからバリエーションも多岐にわたるうえ、緊急で使用することが多いため事前にピンポイントでメーカーに発注することが難しいといった課題があるという。現状では、メーカーが各サイズや種類を都度貸し出して対応しているため、年間数億円分の機器が使用されないまま廃棄されている。
今回の実証試験では、アルムはAI(人工知能)を用いたICT技術によって患者にとって最適な治療計画と治療機器をプログラムで提案。帝人は独自のRFID「Recoシリーズ」を用いて物流在庫や病院内で正確な在庫管理を実現することで、流通在庫を絞りながらも、必要な機器の欠品リスクや機器選別による時間コスト、ヒューマンエラーの削減を実現するとしている。
実証試験には、東京慈恵会医科大学の関連医療機関である脳神経外科東横浜病院、血管カテーテル機器を販売するアルバース、医療機器メーカーのカネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、センチュリーメディカル、テルモなど複数の病院/企業が参画している。
なお、アルムは今回の実証試験に先駆け、東京慈恵会医科大学、順天堂大学、東京理科大学との共同研究「AI技術により最適化された脳血管内治療計画プログラムと遠隔治療支援システム化による安全性向上および医療従事者の負担軽減を実現する医療エコシステムの開発」を構想しており、日本医療研究開発機構の令和4年度「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業」に採択されている。
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