「ヒューマンサイエンス」「情報通信」「モビリティー」「新技術・新材料・新市場」に注目:福田昭のデバイス通信(379) 2022年度版実装技術ロードマップ(3)
今回は「2022年度版 実装ロードマップ」から、第2節(2.2)「電子機器群の分類と定義」の概要をご紹介する。
最新の実装技術ロードマップで報告する電子機器群の分類と定義
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要をシリーズで紹介している。シリーズの初回である前々回は、発行の経緯や書籍の仕様と購入方法、章立ての構成、解説動画の存在、2019年度版の読者アンケート結果などを報告した。ロードマップ全体では、第1章「総則」に相当する部分である。
続く前回では、第2章「注目される市場と電子機器群」から第1節(2.1)「科学技術・イノベーションに係る国内外の動き」の概要を説明した。今回は第2節(2.2)「電子機器群の分類と定義」の概要をご紹介する。
第2章第1節(2.1)「科学技術・イノベーションに係る国内外の動き」と第2章第2節(2.2)「電子機器群の分類と定義」の詳しい目次[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
新型コロナ感染症とカーボンニュートラルを2022年度版には反映
「実装技術ロードマップ」は2013年度版までは、電子機器を個別に取り上げて動向を解説してきた。例えば同年度版は、「ウェアラブル機器」や「デジタルスチルカメラ」、「スマートフォン」などの8種類の機器を載せていた。2015年度版からは個別の機器ではなく、市場分野別に項目を設定した。同年度版は「メディカル」と「エネルギー」、「モビリティー」の3つの項目を設け、その中で注目される電子機器を解説した。2017年度版からは2015年度版の項目に加え、トピックスを扱う「新技術・新材料・新市場」を設けた。
2019年度版では、分類に「情報通信」を設けるとともに「エネルギー」を廃止した。なお「エネルギー」の一部は「情報通信」に移動させた(参考:「「情報通信」「医療・生命科学」「モビリティー」「新たな技術と材料、市場」に注目」)。分類は「情報通信」「メディカル・ライフサイエンス」「モビリティー」「新技術・新材料・新市場」となった。
最新の2022年度版では、この間に人類社会で起きた2つの大きな出来事、すなわち「新型コロナ感染症の世界的な流行」と「地球温暖化ガスの抑制(カーボンニュートラル)」を反映させた。分類はトップに「ヒューマンサイエンス」(メディカル・ライフサイエンスの内容を見直したもの)、それから「情報通信」「モビリティー」「新技術・新材料・新市場」とした。
「ヒューマンサイエンス」では、「ヘルスケア」「メディカル」「人間拡張」の3つの項目を選択した。新しく「人間拡張」を設けている点が興味深い。続く「情報通信」は、「データセンターサーバー」「6G(beyond 5G)」「5G基地局」「モバイルデバイス」「VR/AR/MR」の5つの項目で構成する。「6G(beyond 5G)」を新しく設けた。
それから「モビリティー」は、「自動運転」「コネクテッド」「電動化」「給電・水素」「航空機・空飛ぶクルマ」の5つの項目で構成する。電動化に関連して「給電・水素」と「航空機・空飛ぶクルマ」を追加した。最後の「新技術・新市場・新材料」では、「エネルギー」「次世代ディスプレイデバイス」「ロボット」「量子技術」「接合技術」を取り上げた。
電子機器群の分類と外形寸法、実装密度の関係。「ヒューマンサイエンス」(赤色の枠で囲んだ機器)、「情報通信」(青色の枠で囲んだ機器)、「モビリティー」(緑色の枠で囲んだ機器)、「新技術・新材料・新市場」(紫色の枠で囲んだ機器)を色で区分けした[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
なお、実装ロードマップの購入者特典に関する情報が変更されたのでお知らせしたい。購入者特典である解説動画の公開期限が、当初の今年(2022年)12月31日から、来年(2023年)の6月末日まで延期されることが決まった。購入を検討している方には、朗報といえよう。
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