半導体の設計、今後は「マルチフィジックス」解析が鍵に:複雑化するチップ設計に対応(2/2 ページ)
先端プロセスノードへの移行や、チップレット、3D(3次元) ICなどの技術が台頭する中、シミュレーションの世界にはどのような変化が起きているのか。Ansysの半導体・エレクトロニクス・光学ビジネス担当ゼネラルマネジャー、John Lee氏に話を聞いた。
日本の半導体市場は「さらに強くなる」
――Ansysにとって日本市場はどのような位置付けでしょうか。
Lee氏 Ansysにとって重要な市場だ。日本の半導体市場は強く、今後さらに強くなっていくだろう。CMOSイメージセンサーで強みを持つソニーの他、NAND型フラッシュメモリを手掛けるキオクシア、車載向けやIoT(モノのインターネット)・インフラ向け半導体を手掛けるルネサス エレクトロニクス、コンポーネントで強い村田製作所、最先端ICを設計するソシオネクストなど、存在感を示す日本の半導体企業はまだ多い。自動車産業にも強みを持っている。さらに、日本の政府や大学、企業は、ポスト5G(第5世代移動通信)、AI(人工知能チップ)、量子コンピュータなどの研究開発に積極的に取り組んでいる。Ansysは今後、日本の半導体関連企業とのパートナーシップをさらに強化していく考えだ。
――コロナ禍において、シミュレーション分野に何か変化はありましたか。
Lee氏 コロナ禍の厳しい状況においても、新たな設計が次々に登場し、従ってマルチフィジックス解析の重要性はますます高まっている。特に、リモートワークが増える中、「シミュレーションをしっかり行うことは、効率的なリモートワークにつながる」ことを実感し始めた顧客も多いと感じる。つまり、シミュレーションの価値や重要性がさらに高まっている。
クラウドサービスの強化を目指す
――今後はどのようなビジネス戦略に注力していきますか。
Lee氏 クラウドコンピューティングでシミュレーションが行える環境を整えていく。ただし、クラウドサービスはコスト高になることが多い。われわれは、シミュレーション/解析ツールのアーキテクチャを合理化し、コストをなるべく抑えられるソリューションの提供を重視している。AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azure上でAnsys製品を使えるようにするための実証も進めている。例えばRedHawk-SCをクラウドコンピューティング経由で使用した場合、コストが従来比で2分の1や3分の1で済むケースがある。
2022年10月には、AWS上でAnsysのシミュレーションツールにアクセルできる「Ansys Gateway powered by AWS」を発表した。
オプティクス/フォトニクス分野も強化していく。そのために当社は過去4年間で、高性能光学イメージングシステムシミュレーションを手掛けるZemaxや、フォトニック設計/シミュレーションツールベンダーのLumerical、3D光学解析ソフトウェアを手掛けるSpeosを買収した。
――今後、Ansysにとって鍵となり得る分野や技術として、何か注目しているものがあればお聞かせください。
Lee氏 ポストシリコンの検証や特性評価、いわゆるポストシリコンデバッグが挙げられる。マルチフィジックスでは、パラメトリックイールド(特性歩留まり)が重要になる。顧客からは、マルチフィジックスおよびパラメトリックイールドに対応できるソリューションを求める声も出ている。Ansysは現在、そういったソリューションを開発し、評価を進めているさなかだ。ポストシリコンデバッグは、当社のプラットフォームにおいて新しいユースケースになり得る。
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