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量子ドットデバイスを集積化合成する技術を開発グラフェンナノリボンを活用

東北大学は、グラフェン量子ドットデバイスの集積化合成技術を開発した。同一基板内に複数のデバイスを形成し、その半数以上でクーロンダイヤモンドを観測するなど、大規模集積化の可能性を実証した。

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励起準位は、20K(−253℃)まで安定に存在可能

 東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の加藤俊顕准教授らによるグループは2023年1月、同大学材料科学高等研究所、電気通信研究所、量子科学拠点(TQA)の大塚朋廣准教授らによるグループと共同で、グラフェン量子ドットデバイスの集積化合成技術を開発したと発表した。同一基板内に複数のデバイスを形成し、その半数以上でクーロンダイヤモンドを観測するなど、大規模集積化の可能性を実証した。

 研究グループはこれまで、2次元シート材料のグラフェンをナノメートル幅のリボン構造(疑似1次元化)にした「グラフェンナノリボン」を集積化合成する技術を独自に開発。この技術を用いて100万本のグラフェンナノリボンを98%の効率で集積化合成することに成功してきた。

 ところが、この方法で合成されるグラフェンナノリボンは、長さが数百nm〜1μmの1次元構造となっており、詳細な量子ドットとしての振る舞いは解明されていなかったという。これに対し、グラフェンナノリボンの長さを短くして0次元構造に近づければ、より安定した量子ドットを形成できることが分かっていた。

 これを実証するため、Niナノバー長(LNi)を変化させて合成条件の最適化を行った。この結果、グラフェンナノリボンデバイスの作製効率は、LNiが短くなると向上することが分かった。また、15K(−258℃)以下の低温下で合成したグラフェンナノリボンの量子伝導特性を測定すると、LNiが100〜200nmという条件下において、極めて良好なクーロンダイヤモンド特性を高い確率で観測することができたという。解析の結果から、グラフェンナノリボン中にできた幅の狭い局所構造が、0次元の量子ドットとして振る舞っている可能性があることを示した。

グラフェンナノリボンの合成モデル図
左はグラフェンナノリボンの合成モデル図、右上は合成したデバイスにおいてクーロンダイヤモンドが観測される確率のLNi依存性、右下は局所構造を持つグラフェンナノリボンの走査型電子顕微鏡像 出所:東北大学

 さらに研究グループは、16個のグラフェンナノリボンデバイスを基板上に集積し、クーロンダイヤモンドが観測されるデバイス確率を確認した。この結果、9個のデバイスにおいてクーロンダイヤモンドを観測することができたという。これは、グラフェンナノリボン量子ドットを56%という作製効率で、同一基板上に集積化合成できることを示すものだという。

グラフェンナノリボン集積デバイスの構造模式図
上はグラフェンナノリボン集積デバイスの構造模式図、下は集積した16個のうち9個のデバイスでクーロンダイヤモンドを観測 出所:東北大学

 グラフェンナノリボン量子ドットについて、2.2K以下という極低温下で量子伝導特性を評価した。これにより、クーロンダイヤモンド特性のダイヤモンド端周辺に、複数の平行したラインを観測できたという。これらがグラフェンナノリボン量子ドットにおける励起準位であることが明らかとなった。

 しかも、グラフェンナノリボン量子ドット中の励起準位は、20K(−253℃)程度まで安定に存在できることが分かった。その理由として研究グループは、「量子ドットの起源がグラフェンナノリボン中に形成された10nm程度の極めて微細な局所構造である」ことや、「グラフェンナノリボン中の電子の有効質量がSiに比べて軽い」ことを挙げた。

2.2Kで測定したグラフェンナノリボン量子ドットのクーロンダイヤモンド特性
2.2Kで測定したグラフェンナノリボン量子ドットのクーロンダイヤモンド特性(左)と、励起準位が観測された領域の拡大図(右) 出所:東北大学
グラフェンナノリボン量子ドットにおける励起準位の温度依存性
グラフェンナノリボン量子ドットにおける励起準位の温度依存性 出所:東北大学

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