東北大、AKCFシート材で半導体特性の発現を確認:バイオマス素材を半導体素子に
東北大学は、ケナフから作製したアモルファスケナフセルロースナノファイバー(AKCF)シート材に、半導体特性が発現することを確認した。安価で無害のバイオマス素材を用い半導体素子を実現できる可能性を示した。
AKCFシート材のI-V特性、n型半導体特性を示す
東北大学未来科学技術共同研究センターの福原幹夫リサーチフェローと同大学大学院工学研究科附属先端材料強度科学研究センターの橋田俊之教授らによる研究グループは2023年1月、ケナフから作製したアモルファスケナフセルロースナノファイバー(AKCF)シート材に、半導体特性が発現することを確認したと発表した。安価で無害のバイオマス素材を用い半導体素子を実現できる可能性を示した。
研究グループはAKCFを用いて、繊維径10〜30nmのAKCFシートを作製。このシートにAl電極を設けデバイスのI-V(電流-電圧)特性、AC(交流)インピーダンス、周波数解析、蓄電性を測定した。
実験では、AKCFシートに対し−200〜100Vの範囲で電圧を昇降(上下操作速度は毎秒1.24V)させ、I-V特性を測定した。そうしたところ、ある電圧以上になると電流が低下する負性抵抗が発現した。定電圧を保持したI-V特性でも、−40V以上になると明確なN型で、かつ電流変化が生じる負性抵抗を確認した。この現象が生じるのは、電流に幅があり振動しているためだという。65Vにおける電流振動のFFTスペクトラムを確認すると、40.6MHzに大きなピークが現れた。
R-V(抵抗-電圧)特性の測定結果を見ると、抵抗値は0V付近で4〜5桁の上昇が見られた。これは、回路電流オン/オフのスイッチング現象が起きたことを示すものだという。
研究グループは、AKCFの表面を原子間力顕微鏡(AFM)や透過電子顕微鏡を用いて解析した。この結果、AKCFの表面は繊維径10〜30nmのCNFシート材から成り、アモルファス相が構成されていることを確認した。また、広視野X線回折パターンにより、アモルファスセルロース相の存在を示す幅広いピークが約16度、23度、30度、35度に現れていることが分かった。
AKCFシートのACインピーダンス特性を計測し、低抵抗と高抵抗の2つの半円を持つナイキスト線図を得た。2つの半円は「針葉樹の繊維(バスト)」と「広葉樹の繊維(コア)」から成り、「大きな半円は電極が高抵抗の多孔質表面を持つため」と分析している。
研究グループは得られたナイキスト線図から、以下のように判断している。「AKCFシートは、R1<R2とC1<C2の時に、R1とC1の回路とR2とC2の回路が並列接合しており、直流通電時のR1とR2の並列回路(低伝導帯)から交流通電時のR2とC2の並列回路(高伝導帯)に変化することが可能である。抵抗値は、R1<R2であることから直流通電時よりも交流通電時の方が大きく、ガンダイオード(Gunn Diode)に類似した、低伝導帯から高伝導帯に変わるときに発現するN型負性抵抗の挙動を示す」という。
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