5Gマルチセクターアンテナ屋内基地局装置を開発:回路規模を従来装置の10分の1に
横浜国立大学とNTTドコモ、日本電業工作および富士通は、マルチセクターアンテナを実装した5Gマルチセクターアンテナ屋内基地局装置を共同開発し、28GHz帯の電波を用いた通信の実証実験に成功した。従来装置に比べ回路規模を約10分の1に小型化している。
28GHz帯の電波を用いた通信の実証実験に成功
横浜国立大学とNTTドコモ、日本電業工作および富士通は2023年1月、マルチセクターアンテナを実装した5G(第5世代移動通信)マルチセクターアンテナ屋内基地局装置を共同開発し、28GHz帯の電波を用いた通信の実証実験に成功したと発表した。従来装置に比べ回路規模を約10分の1に小さくできるという。
高い周波数帯の電波は、直進性が強く減衰しやすい。このため、28GHzなどミリ波帯を利用する5Gシステムではこれまで、多素子の平面アレーアンテナを複数個用いるなどして、全方位へ電波を届けていた。この結果、回路規模は大きくなり、システム運用時の電力消費や設置性なども課題となっていた。
今回の実証実験に用いたマルチセクターアンテナは、特定の方向に強く電波を送受信できる指向性アンテナ素子を放射状に12素子配置した。これにより、1つのアンテナ筐体で360度全方向の空間をカバーすることが可能となった。
神奈川県横須賀市にあるドコモR&Dセンター内の大型電波暗室で行った実験では、開発した5Gマルチセクターアンテナ屋内基地局装置(RU)と、5G基地局制御装置(CU)の実機を接続し、全方向への28GHz帯電波放射と無線ビーム制御による切り替えを確認した。
富士通らは今後、さまざまな環境で5Gマルチセクターアンテナ屋内基地局装置の実証検証を重ねながら、アンテナ部分の回路実装に取り組み、基地局装置の早期実用化を目指す考えである。
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