PCM搭載の車載マイコン、OTAのソフト更新が高速に:STが「Stellar」でデモ
STマイクロエレクトロニクスは「第15回 オートモーティブワールド」で、相変化メモリ(PCM)を内蔵した車載用32ビットマイコン「Stellar」のデモを展示した。
STマイクロエレクトロニクスは「第15回 オートモーティブワールド」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)で、相変化メモリ(PCM)を内蔵した車載用32ビットマイコン「Stellar」のデモを展示した。同社はStellarを次世代車載マイコンと位置付けていて、直近では2022年9月に「Stellar P6シリーズ」を発表している。
現在主流となっているフラッシュマイコンでは、搭載されているフラッシュメモリのデータを書き換えるためには、バイト単位/セクター単位で消去する必要がある。それに対し、PCMは消去が不要で、1ビット単位で上書きできる。「フラッシュメモリでは、1Mバイト当たり約4秒で消去し、その後、約1.12秒で書き込む。PCMでは消去時間が丸ごとなくなるので、単純計算で、データ書き換え速度はフラッシュメモリに比べて約4.5倍になる。工場での書き込み時間もそれだけ短くなるので、同一時間でより多くのPCM搭載マイコンを出荷できるようになり、製造コスト改善にも寄与する」とSTマイクロエレクトロニクスは説明する。
1セル解放でOTAアップデートを高速に
さらに、PCMはOTA(Over the Air)のソフトウェア更新をより効率的、高速に行える。従来のフラッシュマイコンでは、動作中でもソフトを書き換えできるように、フラッシュメモリを外付けしたり、フラッシュメモリの容量を2倍にしたりする必要があり、コストが高くなるケースが多い。それに対し、1ビット当たり2セルを持つPCMは、「2セルをまとめて1つの論理ビットとして使用する」あるいは「1セルごとに分割し、各セルを1つの論理ビットとして使用する」ことができ、これを生かしてOTAアップデートを高速にできる。さらに、マイコンのコスト削減にも寄与する。
具体的に、StellarのPCMでは、上記の前者を「通常モード(ディファレンシャルモード)」、後者を「OTA X2モード(シングルエンドモード)」とし、ユーザー側で切り替え可能としている。例えば容量が20Mバイトの場合、通常モードでは、ユーザーは20Mバイトを使用する。一方、OTA X2モードでは、1セルが解放されて20Mバイトが追加される形になり、容量は40Mバイトに増加する。この解放された20Mバイトを使って、OTAによるソフトウェア更新を行えるようになる仕組みだ。
そのため、メモリ容量がより少ないマイコンを使用できるようになる。「例えばOTAでのソフト書き換えに5Mバイトを確保したい場合、従来は10Mバイトのメモリ容量を持つマイコンを用意する必要があった。Stellarであれば、5Mバイトで済む。これはコスト面でも、マイコン調達面でも大きなメリットがある」(同社)
デモでは、OTAでの書き換えを模擬(ボードとPCを有線で接続)し、小型ディスプレイ上のロゴを高速で「Stellar」から「ST」に書き換える様子を示した。STマイクロエレクトロニクスは「これまでStellarファミリーは発表していたが、今回、実際に動作するデモを展示できたというのが大きな成果だ」と強調した。
Stellarは、STマイクロエレクトロニクスのフランス工場で、28nm FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)プロセスにて製造されている。Armの「Cortex-R52」コアの他、「Cortex-M4」コア搭載のアクセラレーターを搭載し、最大20.5MバイトのPCMと、最大8.5MバイトのSRAMを備える。CAN-XL、CAN-FD、CAN、LIN、FlexRayと、代表的な車載ネットワーク規格をサポートしていて、現在は、CAN-XL対応品のサンプルを出荷中だ。
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