フットプリント36%減、EV向けバッテリーテスター:消費電力は年間で6%改善
キーサイト・テクノロジーは、「第15回 オートモーティブ ワールド」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)に出展し、電気自動車向けの低消費電力/省スペースのバッテリーテスターを展示した。
キーサイト・テクノロジー(以下、キーサイト)は、「第15回 オートモーティブ ワールド」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)に出展し、低消費電力/省スペースのバッテリーテスターなど、電気自動車(EV)向けの計測/検査ソリューションを展示した。
EVは、自動車産業の脱炭素化に向けて普及が進んでいる。富士経済の2022年8月の予測では、2035年のEV世界市場は5651万台となり、新車販売台数全体の57.1%を占める見通しだ。
年間消費電力を6%改善、フットプリントは約3分の2に
EVの普及には“良いバッテリー”の開発が不可欠だとキーサイトの担当者は語る。「走行距離と充電時間はトレードオフの関係だ。走行距離を伸ばそうとすると充電時間は長くなり、充電時間を短縮しようとすると走行距離が短くなる。EV市場は“良いバッテリー”を先に開発できた企業が優位性を持つだろう」(同担当者)
キーサイトのバッテリーテスター「SL1740A Scienlab Battery Pack Tester」は、高電圧SiC(炭化ケイ素)技術を採用することで、エネルギー回収効率95%の実現や、超速充電を見据えた最大1500Vの高電圧出力を可能にした。また、同製品は、同社の旧型テスター「SL1000A」と比較して、設備フットプリントは36%減の1MW当たり5.9m2となり、年間消費電力は約6%削減できる。
バッテリー開発には、複数のテストチャネルを備えた開発環境が必要だ。限られたスペースを有効活用するため、バッテリーテスターは小型/省スペース化が求められている。また、EVバッテリーの開発は費用がかさむため、自動車メーカーは完成品の価格を抑えるべくバッテリーのテスト費用を抑える傾向にあるという。同社の試算では、仮にテストシステムの平均消費電力が毎時500kWだった場合、SL1740A Scienlab Battery Pack Testerを使用することで年間5万2560米ドル相当の消費電力量を削減可能だ。
エンジニアの管理工数削減も支援
キーサイトは、バッテリーテスターの統合管理ソフトウェア「Pathwave Lab Operation」も紹介した。同製品では、テストプログラムやテストデータの管理の他、テストスケジュールの管理も統合して行える。収集したデータは、問題点があればキーサイトからフィードバックされる。
バッテリー開発では、開発環境のテストチャネルが増えてくるとエンジニアの管理工数が大きくなるという課題があった。担当者は、「バッテリーテスターの種類や数が少なければ問題ないが、増えてくるとエンジニアの管理工数が増えていく。Pathwave Lab Operationでエンジニアの工数を削減し、EV開発をサポートする」と述べた。
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