曲面にも配線形成、IoT機器の設計をより自由に:産総研のMEMS技術
産業総合研究所は、「MEMSセンシング&ネットワークシステム展 2023」で、複雑形状にも対応可能な配線形成技術や3次元位置/姿勢計測が可能な高精度マーカーなどを展示した。
産業総合研究所(以下、産総研)は、「MEMSセンシング&ネットワークシステム展 2023」(2022年2月1〜3日、東京ビッグサイト)に出展し、流線形などの複雑形状にも対応可能な信号伝送路/配線形成技術や、3次元位置/姿勢計測が可能な高精度マーカーなどを展示した。
複雑形状面への配線形成技術
複雑形状面への配線形成技術は、シリコーン転写体の柔軟性を生かしたスクリーンオフセット/スクリーンパッド印刷技術を活用するもの。曲面上、ステップ状段差、空隙がある布地や紙など、複雑形状を有する基板表面への配線形成が可能だ。
電子デバイスの配線(信号伝送路)は、基本的に平たんな基材上に形成されるのが一般的だ。しかし、多種多様なIoT(モノのインターネット)機器が開発される中で、レイアウトや設計の自由度を高める必要性が出てきた。産総研は、柔軟なゴム転写体を利用したコンフォーマル印刷パターニングを開発し、複雑形状面への配線形成を可能にした。
同技術は、アディティブ法を用いた印刷技術のため、インク材料の利用効率が極めて高く、装置やプロセスのコストを抑えることができる。産総研は今後、IoTデバイスの配線板レス化、新規のセンサーエレメントの製造に向けた新しいプロセス技術として研究を進める予定だ。
高精度マーカーを用いた3次元位置/姿勢計測
3次元位置計測や姿勢計測が可能な高精度マーカー「LEAG(LEnticular Angle Gauge)」も展示した。同製品は、レンチキュラーレンズと細かい縞模様を組み合わせたAR(拡張現実)マーカーで、見る位置によってマーカーにデザインされた黒線が移動して見える。カメラで同マーカーを読み込んだ際に認識した模様から、カメラの相対位置を計測する仕組みだ。なお、同技術は産総研が開発し、製品化/提供はリーグソリューションズが行っている。
従来のマーカーは、姿勢(角度)によって読み取り精度が悪化するという問題があった。LEAGでは、マーカー正対時の姿勢推定誤差を従来比で10分の1未満に削減。誤差1mm以下、1度以下の精度を実現した。
活用場面としては、計測分野では3次元計測や物体の動作トレッキング、制御分野では自動運転やドローンなどの移動体の制御システム、測位分野では取得した3次元の位置/姿勢データを使った屋内での位置計測システムなどを想定している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 1万回折り曲げても大丈夫、回路を印刷したPETフィルム
2022年12月14日から開幕した「SEMICON Japan 2022」(2022年12月14日〜16日、東京ビッグサイト)では、フレキシブルエレクトロニクスに関する展示「FLEX Japan 2022」も開催された。 - 名古屋大ら、高品質のSiGe半導体を印刷で実現
名古屋大学らによる研究グループは、特殊なペーストをシリコン(Si)単結晶基板に印刷し、非真空下で数分程度の熱処理を行うことにより、高品質なシリコンゲルマニウム(SiGe)半導体を実現することに成功した。 - MoS2トランジスタのコンタクト抵抗を大幅低減
産業技術総合研究所(産総研)は東京都立大学と共同で、二硫化モリブデン上に層状物質である三テルル化二アンチモンを成膜し、トランジスタのコンタクト抵抗を大きく低減させることに成功した。 - 九州大ら、グラフェンデバイスの特性を大きく向上
九州大学と大阪大学および、産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは、化学気相成長(CVD)法を用い、大面積で均一な多層の「六方晶窒化ホウ素(hBN)」を合成。これを用いるこで、大規模なグラフェンデバイスの特性を大きく向上させたという。 - 産総研、金属Na添加でGICを高速かつ簡便に合成
産業技術総合研究所(産総研)は、金属ナトリウム(Na)を添加することで、グラファイト層間化合物(GIC)を高速かつ簡便に合成できる方法を開発した。リチウムイオン電池材料などに用いられるGICの大量生産が可能となる。