Apple「M2」プロセッサ搭載のMacBook Pro/Mac miniを分解する:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(71)(3/3 ページ)
今回は、Appleのプロセッサ「M2」に焦点を当てる。M2が搭載された「MacBook Pro」「Mac mini」を分解し、M2周りを解析した。
M2 Pro搭載の「Mac mini」
図5は、M2 Max版MacBook Proと同じ2023年1月に発売された、M2 Pro搭載の「Mac mini」の様子である。M2 Pro版MacBook Proも同日に発売されているが、当社はMac miniの方を分解してM2 Proを解析した。
Mac miniも形状/サイズが旧モデルとほぼ同じものとなっている。分解は、まず下部の円形カバーを取り外す。次に内部の金属カバー(カバー内部に通信アンテナが埋め込まれている)を取り外すと、内部の基板などが見えるようになっている。
図6に、Mac miniの内部を取り出す様子を示す。大きく3つの部品で構成されていることが分かる。空冷ファン、電源ユニット、基板である。
図6で、右下の基板には巨大なヒートシンクが乗っていて、ヒートシンクの下にプロセッサがある。ヒートシンクは空冷ファンに接続され、放熱処理が施されている。内部はMacBook Proと同じで、ほぼ隙間がない。また基板上の多くの場所にはグラファイトシートが貼られており、特性を重視した構造になっている。
図7は、Mac miniの基板の主要チップの様子である。Mac Book ProのM2 Maxと同じく、M2 ProでもApple製の電源ICと多くの電源系部品に囲まれた中にプロセッサが配置されている。基板の裏面も多くの電源強化部品が設置されている。
電源がキレイになることは、静かな海に似ている。凪の海なら船は支障なく進むことができる。一方荒れた海では船は揺れてしまう。基板の電源を強化して凪に近づければプロセッサは安定して高性能を発揮できるわけだ。Appleの基板や高性能GPUボードなど多くの基板はプロセッサと特性の両者を考慮して開発されており、近年では体積で言えば特性系3に対して機能1(かなりざっくり)というほどに電源系部品のウエイトが増えている。Mac miniのプロセッサ以外は、ほぼ特性系部品と言っていい構成になっている。
図7で、基板の左上は、NANDフラッシュメモリ部だ。当社は、3カ所が未実装の最小フラッシュのモデルを分解した。M2 Proのパッケージ内部にもプロセッサ、DRAM、シリコンキャパシターなど多くのシリコンが組み込まれている。
「M2」プロセッサの一覧
表1は、M2プロセッサの一覧である。2022年のM2、2023年のM2 Pro、M2 MaxともにDRAM込みのプロセッサとApple製電源ICがセットとなっている。放熱量(回路規模にほぼ比例)に合わせて空冷ファン数が異なったものとなっている。今後、M2 Ultra、M3シリーズと進化していくことは間違いない。現在M2 Pro、M2 Maxはパッケージを開封しシリコン内部解析中であり、開封結果は本稿で報告したいと考えている(有償のテカナリエレポートでは間もなく報告します)
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