太陽誘電、チタン酸バリウムの新材料棟が完成:積層セラコンの生産強化
太陽誘電は2023年3月1日、積層セラミックコンデンサーの原材料であるチタン酸バリウムを製造するため、八幡原工場(群馬県高崎市)に建設していた新材料棟の竣工(しゅんこう)式を実施した。同施設は2023年度中の稼働を予定している。
太陽誘電は2023年3月1日、八幡原工場(群馬県高崎市)新材料棟の竣工(しゅんこう)式を開催した。新材料棟では積層セラミックコンデンサー(MLCC)の原材料になるチタン酸バリウムを生産する。今後、試験生産を経て2023年度中の稼働を予定する。
新材料棟は、建築面積約6600m2、述床面積約2万500m2の4階建て建屋。2021年9月に着工し、2023年1月に完成した。投資額は、建屋のみで約50億円。生産設備を含めた総投資額や生産規模については明らかにしていない。
太陽誘電社長の登坂正一氏は「材料分野は、電子部品の基礎となるものだ。新しい材料棟は、最新鋭の設備を導入するとともに、建物の省エネ化にも取り組み『ZEB Ready』(基準一次エネルギー消費量に対して50%以上の削減を達成)の承認も取得している。太陽誘電は今後も、エレクトロニクス機器の進化を支える電子部品を開発していく」と述べた。
竣工式に合わせメディア向けに新製造棟内部が公開された。新材料棟の生産工程は、上層階から下層階へと進んでいく。
上層階の3〜4階では、外部から調達するチタン化合物とバリウム化合物を水を使って均一に混ぜ合わせた後、乾燥させ水分を飛ばす。2階では、チタン化合物とバリウム化合物の混合物を合成してチタン酸バリウム(BaTiO3)を生成、粉砕して「I材」と呼ばれる基礎物質を製造する。
I材は、スマートフォン用や自動車用などの用途に合わせて独自の添加物を加えることで、「II材」と呼ばれる仕様用途に特化した材料になる。II材の製造工程はおおむねI材と同様で、I材に添加物を均一に混ぜ合わせた上で合成し、その後、脱脂や粉砕といった工程を経て1階で出荷/包装される。
太陽誘電の既存工場では、平均粒径100nmのチタン酸バリウム(II材)が量産可能だ。今回の新材料棟建設により、需要が増加しているスマートフォンや、今後需要増が期待されている自動車向けの積層セラミックコンデンサー用の材料として、チタン酸バリウムの生産を強化すると共に、さらに微細化を進めた平均粒径が50nm、30nm、10nmのチタン酸バリウムの研究開発も進めている。
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