初のグローバルシャッター方式ラズパイ用カメラをデモ:enbedded world 2023
英国Raspberry Pi財団はドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(2023年3月14〜16日)に出展し、初のグローバルシャッター方式イメージセンサー採用カメラモジュール「Raspberry Pi Global Shutter Camera」を展示。従来品との比較によって、産業向けに特化した特性を強調した。
英国Raspberry Pi財団はドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(2023年3月14〜16日)に出展し、同月発表したグローバルシャッター搭載イメージセンサーを採用したカメラモジュールの新製品「Raspberry Pi Global Shutter Camera」と従来品の特性を比較するデモを展示していた。
産業用アプリケーションに特化
Raspberry Pi Global Shutter Cameraは2023年3月9日(英国時間)に同財団が発表した新製品で、ラズパイ用カメラモジュールとして初めてグローバルシャッター方式のイメージセンサーを採用。説明担当者は、「産業用アプリケーションに特化して設計したカメラだ」と述べていた。
同財団が販売するラズパイ用カメラモジュールはこれまで、全てローリングシャッター方式のイメージセンサーを採用していた。これはセンサーの一辺から、もう一辺へと画素配列の各列を順次スキャンしていく方式で、移動する対象物、特に回転する対象物の撮像結果にひずみが生じる場合がある。こうしたひずみは仮に知覚できないような軽度なものであっても、マシンビジョンアルゴリズムの動作に悪影響を及ぼす可能性があるといった課題があった。今回採用したグローバルシャッター方式は、全画素を同時に露光する形式であり、こうしたひずみの発生が無くなることから産業用アプリケーションに適するとしている。
Raspberry Pi Global Shutter Cameraは、具体的には、ソニーの158万画素のグローバルシャッター方式CMOSイメージセンサー「IMX296」を搭載。3.45μm×3.45μmという大きな画素サイズによる高い光感度によって短い露光時間(十分な照明があれば30マイクロ秒程度)で動作できる。モジュールのサイズは縦38mm×横38mm×厚さ19mmで、重量は34g。マウント/CSマウントレンズを装着可能だ。なお、専用アダプターとダストキャップを装着すると厚さは29.5mm、重量は41gとなる。
Raspberry Pi Global Shutter Cameraは、画素数としては同社が2020年に発表した高品質カメラモジュール「Raspberry Pi High Quality Camera」の1230万画素(ソニーの「IMX477」搭載。ローリングシャッター方式)よりも低くなるが、「高解像度の画像は一般的にマシンビジョンモデルに入力する前にダウンサンプリングされるため、解像度の低下は問題にならない」と説明している。
回転するファンの映像で性能を比較
今回、同財団のブースでは、回転するファンをRaspberry Pi Global Shutter CameraとRaspberry Pi High Quality Cameraでそれぞれ撮影するデモを展示。Raspberry Pi High Quality Cameraによる映像では、ローリングシャッター方式のためファンの左半分が変形してしまう一方、Raspberry Pi Global Shutter Cameraによる映像は肉眼で見るのと同様のひずみが無いものとなっていた。
説明担当者は、「生産ラインなどで用いられるカメラではこうした安定した画像が不可欠だ」と強調。一方で、「高画質のRaspberry Pi High Quality Cameraはコンシューマー市場など引き続き幅広い用途に対応する製品だ」と製品の住み分けを強調していた。
Raspberry Pi Global Shutter Cameraの価格は50米ドル。日本国内でも販売中で、スイッチサイエンスでは8525円(税込み)となっている。
また、ブースでは2023年1月に発表した新カメラモジュール「Raspberry Pi Camera Module V3」も展示していた。同モジュールはソニーの1200万画素CMOSイメージセンサー「IMX708」を搭載。前世代と比較し、高画素化(前世代は800万画素のソニー「IMX219」を搭載)およびHDR、オートフォーカス対応、低照度感度の向上を実現した製品だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ラズパイ〜カメラ間をプラグ&プレイで延長するキット
ザインエレクトロニクスは2021年3月、プログラミングや設定作業なしに、シングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」(通称:ラズパイ)とカメラモジュールの伝送距離を10メートルを超える程度まで延長できるキットソリューションを開発。オンライン通販サイトのDigiーKeyなどでの発売を開始した。販売想定価格は約60米ドル。 - 「ラズパイ」に訪れた転換期、ホビー・教育から業務用途の拡大が進む
手のひらサイズの低コストなシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、ラズパイ)」は、もともと教育やホビー用途として開発された。そのラズパイが今、転換期を迎えている。業務用途での採用が、当初の教育用途を上回っているのだ。ラズパイを業務用途で採用することの利点とは何だろうか。 - ラズパイ4は「産業用で魅力的」、広がる活用事例
シングルボードコンピュータなどの販売を手掛けるTechShareは2019年10月30日、日本Raspberry Piユーザグループとともに、「Raspberry Pi(以下、ラズパイ)」の産業利用に関する情報を共有するイベント「Raspberry Pi Industry User Conference 2019」を都内で開催した。【訂正あり】 - やっぱり“教育用途”のラズパイはすごかった
本来の目的で使われているラズパイの“真の力”を見た。 - 20万円で始められる、ADIのIoTプラットフォーム
アナログ・デバイセズ(ADI)は、「第7回 IoT/M2M展 春」(2018年5月9〜11日、東京ビッグサイト)で、IoT(モノのインターネット)向けプラットフォームや、構造物モニタリングなどに適用できる低ノイズのMEMS加速度センサーなどを展示した。 - デアゴスティーニでラズパイ使ったIoT、エッジAIも!?
「週刊○○」と題したさまざまなテーマのパートワーク(分冊百科)を提供することで知られるデアゴスティーニ・ジャパンが2020年3月から、Raspberry Piを使ったIoT(モノのインターネット)講座「本気で学ぶIoT」を開始する。毎月届く各種デバイスとオンラインテキストで学習することで、最終的にはエッジAIの活用まで習得できるカリキュラムが組まれているという。