電圧検出応答は10マイクロ秒、車載用バッテリー監視IC:車載の機能安全に貢献
エイブリックは2023年3月22日、車載用高耐圧バッテリーモニタリングIC「S-19114シリーズ」を販売開始したと発表した。電圧検出応答時間(36V動作)は、同社従来製品比で20分の1となる最大10マイクロ秒で、「業界最速」(同社)だという。
エイブリックは2023年3月22日、車載用高耐圧バッテリーモニタリングIC「S-19114シリーズ」を販売開始したと発表した。量産は既に開始していて、2028年には単年度で400万個の販売を目指している。サンプル価格は182円(税抜)だ。
S-19114シリーズは、IC内部の抵抗成分を同社従来製品比で5分の1以下、容量成分も同社従来製品よりも減らすことで、電圧検出応答時間を従来比で20分の1となる最大10マイクロ秒(36V動作時)に短縮した。これは「業界最速」(同社)だという。動作時消費電流は、2.0μA(標準値)に抑えていて、システムの暗電流削減にも貢献する。
自動車業界では、交通事故を未然に防ぐための自動車部品の品質向上を図るとともに、万が一故障した際の影響を最小限にする機能安全への取り組みが進んでいる。その一つに、ECU(Electronic Control Unit)に電圧を供給するバッテリーの遮断時の対策がある。バッテリーからの電源供給が遮断されると、ECUに供給される電圧が低下する。電圧低下を検知してからECUを安全にリセットするためには、一定の時間を確保する必要があり、現在は、コンデンサーをECUの入力に搭載することで対応している。しかし、近年は自動車機能の高度化に伴いECUの統合が進み、ECUに供給する電流が増加傾向にあるため、コンデンサーも増える傾向にあり、コストや基板の専有面積が増えるという課題がある。
S-19114シリーズは、検出応答時間の異なる2種類(10マイクロ秒/25マイクロ秒)、ヒステリシス幅の異なる4種類(0%/2.0%/5.0%/10.0%)、パッケージが2種類(HSNT-6(2025)/SOT-23-5)、計16種類の製品タイプがある。
検出応答時間が10マイクロ秒(36V動作時)の「L/M/N/R」タイプは、従来品よりも検出応答時間が短いため、より高速な検出応答を必要とする場面での活用を想定している。一方、検出応答時間が25マイクロ秒(36V動作)の「P/Q/S/T」タイプは、従来品と同等の検出応答時間で、より消費電流を抑えられる。パッケージは、超小型のHSNT-6(2025) (1.96×2.46×t0.5mm)の製品では、従来品比で約20%の省面積化を実現し、SOT-23-5の製品では、汎用的な形状への需要に対応する。エイブリックは、「S-19114シリーズの活用により、コンデンサーの数を2割弱(最大)減らせると想定している」と述べた。
アプリケーションは、車載バッテリー電圧検出やバッテリーマネジメントシステム(BMS)など、主に車載向けを想定している。今後についてエイブリックは、「48Vバッテリーに対応できるように、動作電圧を60〜80Vまで高めることが目標だ」と説明した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 破水で馬の出産を検知する電池レス無線センサー
エイブリックは2023年2月21日、同社の電池レス無線センサー技術「CLEAN-Boost」で馬の出産時の破水・発汗をセンサーで検知し、無線ネットワークで遠隔通知することができるIoT(モノのインターネット)ソリューションを開発したと発表した。 - 電池パック組み立てを効率化するセカンドプロテクトIC
エイブリックは2022年12月6日、RTC(リアルタイムクロック)駆動用の定電圧出力端子を備えたセカンドプロテクトIC「S-82K3/K4シリーズ」を発表した。3セル/4セル直列用で、S-82K3が3セル用、S-82K4が4セル用となる。パッケージはDFN-8(2020)Aである。主に電池パックメーカーに向けた製品で、電池パックの組み立て時に、ヒューズ溶断を気にせず自由に接続できることが特長だ。 - エイブリック、1セルバッテリー向け保護ICを発売
エイブリックは、充電/放電過電流検出電圧精度が±0.5mVと高い1セルバッテリー向け保護IC「S-82Y1Bシリーズ」の販売を始めた。大容量化が進むバッテリーの急速充電を可能にし、応用機器の安全性も高めることができるという。 - 高精度過電流検知に対応した「世界初」の2セル保護IC
エイブリックは2022年5月31日、外付け電流検出抵抗による高精度な過電流検出が可能な2セル直列用バッテリー保護ICを発表した。 - 超低消費電力のBLE5.2対応MCUで実現する資産追跡
onsemiはドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(2023年3月14〜16日)に出展。Bluetooth Low Energy 5.2対応無線通信MCU「RSL15」を用いた、超低消費電力の資産追跡/位置特定ソリューションのデモなどを展示していた。