大阪大学ら、ハイブリッドガスセンサーを開発:複数のガス種を1種類の材料で検出
京都工芸繊維大学と大阪大学、金沢大学の研究グループは、日本触媒や産業技術総合研究所(産総研)の協力を得て、複数のガス種を1種類の材料で検出できる「ハイブリッドガスセンサー」を開発した。
通常の半導体式ガスセンサーに比べ、電気抵抗値は約1万分の1
京都工芸繊維大学と大阪大学、金沢大学の研究グループは2023年3月、日本触媒や産業技術総合研究所(産総研)の協力を得て、複数のガス種を1種類の材料で検出できる「ハイブリッドガスセンサー」を開発したと発表した。これを用いると、ヘルスケア用混合ガスセンサーをウェアラブル型で実現できるという。
従来の半導体式ガスセンサーは、1種類の半導体材料で、1種類のガスしか検出できなかったという。このため、さまざまなガス種が混合した生体ガス(呼気や体臭など)を同時に検出するためには、複数の材料を組み合わせるなどの対策を講じる必要があった。
研究グループは今回、石英(SiO2)基板上に高移動度材料のグラフェン(2D材料)と酸化モリブデンMoOxナノロッド3次元(3D)ネットワークを複合した新しい構造の半導体式ガスセンサーを開発した。
キャリア伝導層に高移動度材料のグラフェンを採用したことで、高い反応速度を維持しながら、電気抵抗値を極めて小さくすることができた。従来の一般的な半導体式ガスセンサーに比べて、抵抗値は4桁(約1万分の1)も小さいという。また、同一ガス種に対して、従来品はマイナスに反応する。これに対し開発したイブリッドガスセンサーは、まったく逆のプラスに反応するという。この結果から、同一ガス種をまったく異なる信号で検出できることが分かった。
今回の研究は、京都工芸繊維大学の菅原徹教授(兼大阪大学産業科学研究所招へい教授)と大阪大学の小野尭生助教、植村隆文准教授、金沢大学の辛川誠教授による研究グループが、日本触媒、産業技術総合研究所(産総研)極限機能材料研究部門の申ウソク副研究部門長、伊藤敏雄主任研究員の協力を得て行った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ダイヤモンドと絶縁膜の界面にできる欠陥を低減
奈良先端科学技術大学院大学と近畿大学、大阪大学および、台湾成功大学の研究チームは、ダイヤモンド半導体の絶縁膜界面に形成される欠陥の立体原子配列を解明した。ダイヤモンド半導体の開発、実用化に弾みをつける。 - 300℃以上で動作する抵抗変化型メモリ素子を開発
大阪大学の研究グループは、抵抗変化型メモリ素子の「メモリスタ」を、300℃以上の高温環境で動作させることに成功した。航空宇宙や耐放射線といった極限環境での利用が可能となる。 - 九州大ら、グラフェンデバイスの特性を大きく向上
九州大学と大阪大学および、産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは、化学気相成長(CVD)法を用い、大面積で均一な多層の「六方晶窒化ホウ素(hBN)」を合成。これを用いるこで、大規模なグラフェンデバイスの特性を大きく向上させたという。 - 高精度な量子センシングをハードを改善せずに実現
NTTと産業技術総合研究所(以下、産総研)、大阪大学量子情報・量子生命研究センター(以下、阪大)は2022年12月16日、ハードウェアを改善せずに、より高精度な量子センシングを実現できるアルゴリズムを考案したと発表した。 - 曲面にも配線形成、IoT機器の設計をより自由に
産業総合研究所は、「MEMSセンシング&ネットワークシステム展 2023」で、複雑形状にも対応可能な配線形成技術や3次元位置/姿勢計測が可能な高精度マーカーなどを展示した。 - MoS2トランジスタのコンタクト抵抗を大幅低減
産業技術総合研究所(産総研)は東京都立大学と共同で、二硫化モリブデン上に層状物質である三テルル化二アンチモンを成膜し、トランジスタのコンタクト抵抗を大きく低減させることに成功した。