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蓄電材料の充電特性、スパコンの模擬実験で解明:固体素材の内部構造を明らかに
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は、スーパーコンピュータを用いたシミュレーション技術により、高性能蓄電材料の充電特性を解明した。備蓄効率をさらに高める材料の開発につながるとみられている。
「密度汎関数法第一原理計算」手法で、原子配列情報を完全に同定
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)サステイナブルイノベーション研究領域の本郷研太准教授は2023年3月、奥村健司大学院生(博士後期課程2年)や東間崇洋元大学院生、前園涼教授と共同で、スーパーコンピュータを用いたシミュレーション技術により、高性能蓄電材料の充電特性を解明したと発表した。備蓄効率をさらに高める材料の開発につながるとみられている。
電力業界では、電力需給のひっ迫を回避するため、より多くの電荷を効率よく貯蔵したり、素早く充放電したりできる「電力貯蔵システム」や「蓄電材料」の開発に取り組んでいる。例えば、「コバルト水酸化物」と呼ばれる固体材料もその一つで、擬キャパシタ材料として優れた特性を示すことが分かっている。ただ、そのメカニズムや原子配列などはこれまで、明確になっていなかったという。
そこで研究グループは、結晶の基本構造に加え、水素原子(プロトン)が構造中のどこに配置されるかを探るため、スーパーコンピュータを活用してシミュレーションを行った。そして、「密度汎関数法第一原理計算」と呼ばれる手法を用いて、充電特性にかかる原子配列情報の完全な同定に成功した。この結果、高い充電性能を担う相と、充放電を繰り返し行うことで構造が脆くなるのを防ぐ骨格となる相が連携し合い、優れた物質系を実現していることが分かったという。
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