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ソニー「PlayStation VR2」を分解、注力する新チップの存在が浮上この10年で起こったこと、次の10年で起こること(72)(3/3 ページ)

今回は、ソニーが発売したVRデバイス「PlayStation VR2」を分解する。「PlayStation 5」の各品種に採用されているチップについても考察してみる。

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ソニーの新チップ

 表1は、ソニーの新チップ「CXD9006X」の一覧である。2020年に発売されたPlayStation 5で新規に採用されたチップ(メモリを除く)は全てCXD9006Xだ。

PS5に採用されているチップ「CXD9006X」の一覧
表1:PS5に採用されているチップ「CXD9006X」の一覧[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 PlayStation 5は2020年に発売された後に、毎年ブラッシュアップやマイナーモデルチェンジを行っている。2020年の初代の型番は「CFI-1000」で、2021年には「CFI-1100」が登場し、2022年にはプロセッサを入れ替えた「CFI-1200」が発売されている。

 初代のCFI-1000と2021年のCFI-1100では表1の左から、メインプロセッサ「CXD90060」(60番台の最初のチップ)が搭載されている。7nmプロセスノードで製造される、米AMDとソニーの共同開発プロセッサである。「CXD90061」は、ハブコントローラー、いわゆるSouthbridgeである。「CXD90062」はSSDコントローラー、「CXD90063」はOD(Optical Disc)コントローラー、「CXD90064」はPS VR2にも採用されるワイヤレスコントローラーである。

 CXD90060からCXD90064までが、初代PlayStation 5で新規に採用されたチップだ。2022年に発売されたCFI-1200では、6nmプロセスで製造し、面積を縮小した新しいプロセッサが採用されている。新プロセッサの型名は「CXD90066」。CXD90060の7nmからCXD90066の6nmに変更することでシリコン面積は14.9%小さくなっていて空冷ファンやヒートシンクの小型化に寄与し、本体の軽量化につながっている。2022年にCXD90066がCFI-1200で採用され、2023年2月に発売になったPS VR2ではプロセッサに「CXD90067」、プロセッサ用電源ICに「CXD90068」が採用されている。CXD9006Xは、PlayStation 5プラットフォームのためのチップ型番と思われる。

 ソニーはPlayStationという巨大プラットフォームを作るために、プロセッサだけでなく、各種コントローラーまで新規に開発し、CXD9006Xという連番で作り込んでいるのだろう。しかしPlayStation 5用のチップという点でCXD90065が欠番になっているわけだが……。

 図6は、CXD90065GGのパッケージおよびパッケージ裏面、モールドを取り除いた様子である。CXD90065はPlayStation 5ではない2022年後半に発売されたソニー製品に採用されている。本稿では詳細は記さないが、ソニーが非常に力を入れている分野に採用されるチップである。CXD90065もチップ開封解析済み。PlayStation以外にもソニーには多くの製品があるので、CXD9006Xはさまざまなジャンルに使われる新チップ名であるわけだ。

CXD90065GGのパッケージおよびパッケージ裏面
図6:CXD90065GGのパッケージおよびパッケージ裏面[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 表2は、2023年1月に発売されたソニー新「ウォークマン」の内部の様子である。上位機種の「ZXシリーズ」と普及機種の「Aシリーズ」が同時に発売されている(新製品の型番は「NW-ZX707」と「NW-A307」)。ともに内部のプロセッサはQualcommのチップセットが活用されているが、上位機種と普及機種では採用しているチップセットが異なっている。ただし、両機種ともにオーディオ用ICにはソニー製のCXD3778が採用されている! CXD3778は2016年の製品から採用され続けているロングセラーのチップである。デジタルは最新のプロセッサに置き換わっても、音質にかかわるチップはソニー製というわけだ。

2023年1月に発売されたソニー「ウォークマン」と、採用されている主要なチップ
表2:2023年1月に発売されたソニー「ウォークマン」と、採用されている主要なチップ[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 Appleやソニーの製品の存在感は極めて大きい。パッケージ内部のシリコンについても本稿で報告したいところだが、有償レポートでぜひご覧いただきたい。


執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年にわたる半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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