富士フイルム、米社の半導体用化学薬品事業を買収:電子材料事業の成長を一段と加速
富士フイルムは、米国Entegrisのグループ会社で半導体用プロセスケミカル事業を手掛けるCMC Materials KMG Corporation(以下、KMG)を買収すると発表した。2023年中にKMGの全株式を取得する予定だ。
高純度の半導体用プロセスケミカルを大手半導体メーカーに供給
富士フイルムは2023年5月、米国Entegrisのグループ会社で半導体用プロセスケミカル事業を手掛けるCMC Materials KMG Corporation(以下、KMG)を買収すると発表した。7億米ドルを投じて、2023年中にKMGの全株式を取得する予定。
富士フイルムは、半導体製造工程の微細加工で用いられるフォトレジストやCMPスラリーといった「電子材料」を重点事業分野の一つに掲げている。同時に研究開発や生産能力の増強に向けて、積極的な投資を行っている。このような投資効果により、電子材料事業の売上高は2022年度の1806億円に対し、2024年度は2500億円、2028年度は4000億円、2030年度には5000億円を見込む。
今回のKMG買収もその一環。「製品ラインアップの拡充」や「顧客提案力の強化」「より強固なグローバル製造体制の構築」などを図ることで、電子材料事業の成長スピードを一段と加速させるのが狙いだ。
半導体用プロセスケミカルは、半導体製造ラインの洗浄・乾燥工程で、異物を除去したり、エッチング工程で金属や油脂などを取り除いたりするために用いられる化学薬品。こうした中でKMGは、高純度の硫酸や過酸化水素水、水酸化アンモニウム、イソプロピルアルコール(IPA)、フッ酸といった半導体用プロセスケミカルを製造し、世界の主要な半導体メーカーに供給してきた。
グローバルな製造・販売体制もKMGの大きな強みとなっている。KMGは既に、米国やフランス、イタリア、シンガポールなど7カ所に製造拠点を設け、グローバルに製品供給を行っている。富士フイルムにとっても、KMG買収によって欧米での製造拠点を拡充。それに加え、同社半導体材料分野では初めて東南アジアの製造拠点を獲得することになり、より強固な製造体制を構築することになる。
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