JDIの22年度決算は258億の赤字、モバイルからは撤退:4期連続の減収減益
ジャパンディスプレイの2022年度通期業績は、ノンモバイルでの民生機器需要の減少や、モバイルなど不採算事業からの撤退の影響もあり、4期連続の減収減益となった。2023年度も赤字を見込んでいる。
ジャパンディスプレイ(以下、JDI)は2023年5月12日、2022年度(2023年3月期)通期の決算を発表した。2023年3月期の売上高は、前年比8.5%減の2707億円。営業損失は444億円。純損益は258億円の赤字と4期連続の減収減益となった。
JDI社長のスコット・キャロン氏は、「大変厳しい結果となった。コスト増、需要減、稼働減という『ディスプレイ業界の3重苦』が影響した。2023年度も厳しい見通しだが、モバイル分野や一部車載製品などの不採算事業から撤退し、2024年度以降の構造的収益改善を行う」とコメントした。
車載分野は好調も、ノンモバイルは需要減
分野別の売上高では、車載分野は、顧客需要の増加や同社の部材不足解消により前年比25.9%増となる1346億円の増収だった。一方で、ノンモバイル分野は同15.3%減の605億円、モバイル分野は同35.6%減の757億円と減収した。
キャロン氏は「ノンモバイル分野の業績低迷は、世界経済の鈍化や顧客側でのセット値上げの影響で民生機器需要が減少したことが原因。モバイル分野の業績低迷は、戦略的な事業縮小による結果だ」と説明した。
2023年度は、モバイルなど不採算事業から撤退
2023年度(2024年3月期)通期の業績予想は、売上高が前年比11.7%減の2400億円、営業損失が404億円、純損益は478億円の赤字と予想した。キャロン氏は2023年度の業績予想について、「2023年業績の減収予想は、モバイル分野や一部車載分野などの事業撤退が主な理由だ」と述べた。
分野別の売上高では、車載分野が前年比6.2%減の1263億円、ノンモバイル分野が同56%増の945億円、モバイル分野が同74.6%減の192億円を見込んでいる。分野別の業績について同氏は、「モバイル分野の製品は、コモディティ化されていて、JDIの独自性を発揮することが難しいため、撤退を決めた。自動車分野は、一部の不採算事業から撤退するため、2023年度は減少を予想している。しかし、独自性を発揮できていて、長期契約を結ぶ予定もあるため、2023年以降は伸びていくと思われる。ノンモバイル分野は、世界経済の回復予想に加えて、顧客側での新製品発表もあるため、2023年度は成長すると考えている」と説明した。
今後についてキャロン氏は、「フォトメタルマスクを使わない長寿命な次世代OLED『eLEAP』やディスプレイの消費電力を4割抑える『HMO(High Mobility Oxide:高移動度酸化物半導体)技術』など、JDI独自の技術にエンジニアリングリソースや経営資源を投入し、飛躍的な成長を目指す」と語った。
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