ソニー、半導体など「これまでと次元が違う投資が必要」:2023年度経営方針説明会
ソニーグループ社長の十時裕樹氏は、2023年5月18日に開催した2023年度経営方針説明会で、半導体およびエンターテインメント分野などを中心に、グローバルの競合に対抗するため、「これまでと次元が違う投資が必要になる」と言及した。
ソニーグループ(以下、ソニー)は2023年5月18日、2023年度経営方針説明会を開催した。同社社長の十時裕樹氏は、半導体およびエンターテインメント分野などにおいて、グローバルの競合に対抗するため、「これまでと次元が違う投資が必要になる」と言及。投資規模について、次期中期経営計画(中計)期間(2024〜2026年度)では、現中計から「もう一段レベルを上げる」可能性に言及した。
“三笘選手の1mm”捉えた「感動を生み出すクリエーション半導体」
説明会ではまず、ソニー会長の吉田憲一郎氏は経営の方向性について語り、コンテンツIP(Intellectual Property)の強化やパートナー/コンテンツIPでの事業間連携、DTC(Direct to Consumer)サービスといった「クリエイティブの強化」および、VR(仮想現実)やAI(人工知能)などの活用による「感動空間の活用」に関する取り組みについて説明した。
同氏は、CMOSイメージセンサーを「感動を生み出すクリエーション半導体」と呼んでいるが、説明の中で2022年のFIFAワールドカップカタール大会で話題となった“三笘薫選手の1mm”を撮影したのが同社のフルサイズミラーレス一眼カメラ「α(アルファ)」だったことに触れ、「一瞬を切り取るという、大きな目標を持って開発したイメージセンサーがまさに勝敗を分けた瞬間を撮ることに貢献した。また、ソニーのCMOSイメージセンサーはスマートフォンのカメラを通じ、世界中のユーザーがクリエイターになることに貢献している」などと強調した。なお、同社は、イメージセンサー分野において過去5年で1兆円を超える投資を行ってきたが、吉田氏は、「今後もクリエーションを支えるキーデバイスに注力する」と語った。
また、イメージング・センシング技術およびエンタテインメント、5G(第5世代移動通信)を含む通信/ネットワークなどの領域でモビリティ進化に貢献していくとも説明。2022年9月に設立したソニー・ホンダモビリティの新ブランド「AFEELA(アフィーラ)」の開発車両にもこれらの技術を提供していく。
イメージセンサー「圧倒的No.1」としてさらなる成長へ
社長の十時氏は各事業の成長戦略を説明した。イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野については、「イメージセンサーNo.1ポジションをさらに強くすることが大方針だ」と強調。主力のスマホ用イメージセンサーに加えて、車載および産業/インフラ領域についても事業の柱になるよう育てていくとした。
スマホ用イメージセンサーの成長のけん引するのは、引き続き大判化および高性能化と捉えていて、十時氏は、「スマホではカメラの差異化要素として、イメージセンサーの期待が非常に高く、要求される技術水準も年々高まっている」と説明。画素の進化、ロジックチップ貼り合わせによる高機能化、さらにCu-Cu接続による高精度かつ安定品質によって市場の要求に答え、「業界をリードする技術力と生産能力をさらに磨き上げ、圧倒的No.1としてさらなる成長につなげていく」と述べた。
今後市場の拡大が見込まれる車載および産業/社会インフラ領域についても、十時氏は、「これまでに培った技術を積極的に活用し、着実にシェアを拡大させていく」と強調。車載領域ではイメージセンサーのほかLiDAR向けSPAD距離センサーなどを展開。産業/社会インフラ領域においては、「ユニークかつ多彩なセンサー群によって、検査や認識のユースケースを広げ、自動化、省人化など社会のスマート化を通じて需要機会を拡大して行く」とした。
なお、足元の状況については、中国での流通在庫レベルおよび競合の在庫水準がそれぞれ高いことなどから「あまり楽観的には見ていない」(十時氏)という。同氏は、足元の設備投資について、「注意して進める必要がある」と述べ、マクロ環境を見ながら設備増強や投資のタイミングを見極めていくとした。
その上で、同社イメージセンサーの強みとして、「われわれが作ってるのは、コモディティの半導体ではなく、特定顧客にカスタマイズされたセンサーだ。ある程度、開発ロードマップを共有した上で作り込んでいくデバイスで、いわゆるシリコンサイクルのような大きな波にこれまでも巻き込まれずに来ている。この技術のアドバンテージを維持し、強化していく」とも強調していた。
成長拡大に「次元の違う投資必要」
同社は今回、完全子会社のソニーフィナンシャルグループについて、株式上場を前提としたスピンオフの検討を開始したことも発表した。十時氏は、このスピンオフ検討を決定した理由として、金融分野で多くの資本が必要となる一方、イメージセンサーおよびエンタテインメント分野を中心に、「さらに中長期的な成長拡大を進めていくには、これまでとは次元の違う投資が必要になってくる」ことなどを挙げていた。
十時氏は、「各事業を個別にみると、グローバルの競合と比べスケールが足りない。それについては常に意識して、自分たちのポジションを作るため投資を継続していく必要がある。過去も投資は続けてきたが、事業規模が成長するに従い、そのレベルは上げなければならない。本年度を含め過去3年で戦略投資に1兆8000億円、設備投資でイメージセンサーを中心に2兆円とやってきたが、第5次中計を立てるうえでは、もう一段レベルをあげなくてはいけないかもしれない」と、今後の投資拡大の可能性を示唆した。
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