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複数の核酸や病原体を同時に検出できるバイオセンサー:固体電解質薄膜トランジスタを使用
三菱マテリアルと北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は、固体電解質薄膜トランジスタを用いたバイオセンサーを開発し、実用化に向けた製品開発に着手したと発表した。医療分野の遺伝子検査で用いる従来の方法と比べて短時間で検査結果が得られ、複数の核酸や病原体を同時に検出できる。
小型化による用途拡大も見込む
三菱マテリアルと北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)バイオ機能医工学研究領域の高村禅教授、廣瀬大亮助教は2023年5月19日、新しい固体電解質薄膜トランジスタを用いたバイオセンサーを共同開発し、実用化に向けた製品開発に着手したと発表した。
医療分野における遺伝子検査では、一般的にPCR(Polymerase Chain Reaction)法など核酸を増幅して検査する方法が用いられている。今回開発されたバイオセンサーは微小な電荷による電圧変化を大きなシグナルとして検出することで、PCRなどの増幅法に比べて短時間で検査結果を得ることができるという。
また、微細加工技術を利用してセンサー素子を並列に複数個配列し、複数の核酸や病原体を同時に検出できるようにした。PCR法は検査機器が高価かつ大型のため用途が限られていたが、今回開発されたバイオセンサーで用いる固体電解質薄膜トランジスタは小型のため、今後の用途の拡大が見込めるという。
三菱マテリアルでは金属や酸化物などの材料に薄膜を形成するための研究開発を行っており、今回の共同開発では同社の湿式成膜による薄膜材料開発に関する技術を応用した。今後は測定できる核酸の種類を増やすとともに、複数種の病原体を同時に検出できるセンサーの製品化に取り組み、実用化を目指すとしている。
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