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画像診断を支援する人工知能(AI)が医師の負担を軽減福田昭のデバイス通信(385) 2022年度版実装技術ロードマップ(9)

今回は、「(5)医療診断におけるAI活用状況」部分の概要を説明する。

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予防、診断、治療に人工知能(AI)を活用

 電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を第377回からシリーズで紹介している。

 本シリーズの第6回から、第2章「注目される市場と電子機器群」の第3節(2.3)「ヒューマンサイエンス」より第2項(2.3.2)「メディカル」の概要を報告してきた。「メディカル」は4つの項目、すなわち「手術支援ロボット」(2.3.2.1)、「マイクロ流体デバイス」(2.3.2.2)、「感染症とPCR検査、遺伝子検査、迅速検査」(2.3.2.3)、「バイオセンサ」(2.3.2.4)で構成される。

第2章第3節第2項(2.3.2)「メディカル」の目次
第2章第3節第2項(2.3.2)「メディカル」の目次。「2022年度版 実装技術ロードマップ」の書籍本体から筆者が作成したもの。本シリーズの前回や今回などで紹介している「手術支援ロボット」(2.3.2.1)だけは、詳しい目次を掲載した。なお下線部は、完成報告会(2022年7月7日開催)の講演で取り上げた部分を指す[クリックで拡大]

 前回は、「手術支援ロボット」(2.3.2.1)から「(4)医療分野における5G活用状況」部分の概要を報告した。5Gネットワークと手術支援ロボットを組み合わせることで、遠隔操作による内視鏡手術が実施可能であることを、模擬手術によって実証した。

 今回は、「手術支援ロボット」(2.3.2.1)から「(5)医療診断におけるAI活用状況」部分の概要をご説明する。医療には大きく分けて「予防」「診断」「治療」の3つの段階があり、いずれの段階でも、人工知能(AI)が医療水準の向上に貢献できる。本稿では日本国内で「画像診断」にAIを利用する動きを紹介したい。

大腸がんや肺がん、脳動脈瘤などの画像診断で実用化

 日本では厚生労働省が2018年(平成30年)7月に「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」を発足させ、重点テーマとして6つの領域を設定した。6つの領域には、AIの実用化が比較的近いとみられる「1.ゲノム医療」「2.画像診断支援」「3.診断・治療支援」「4.医薬品開発」と、AIの実用化にはまだ時間がかかるとみられる「5.介護・認知症」「6.手術支援」がある。そして日本の強みが発揮できるのは「3.画像診断支援」と「4.医薬品開発」だとした。

 「2.画像診断支援」に関してはAIの活用によって、「1.画像から病変を読み取るときの見落としを防ぐ」「2.熟練医だけが発見できるような初期段階の病変の検出」「3.診断技術のばらつきを減らす」といった効果が期待できる。

 実際に活用が進んでいるのは、がん(日本人の死因の第1位)の診断である。大腸内視鏡検査によるがんとポリープの検出、胃の内視鏡検査によるがんとポリープの検出、胸部X線撮影による肺がんや肺炎などの発見、といった診断を支援するAIソフトウェアが既に開発済みだ。

 例えばオリンパスは2020年3月に、大腸内視鏡の検査画像から病変を検出するAI搭載ソフトウェア「EndBRAIN-EYE」を同年5月下旬に発売すると発表した。同社の大腸内視鏡と組み合わせることで、内視鏡検査中に病変の候補をリアルタイムで検出し、医師に警告するシステムを構築できる。病変の発見作業の負担軽減と病変の見落とし防止につながる。

大腸内視鏡検査でAI搭載ソフトウェアを活用した病変発見のイメージ。
大腸内視鏡検査でAI搭載ソフトウェアを活用した病変発見のイメージ。病変の候補を発見すると、警告音と画像の色で医師に伝える[クリックで拡大] 出所:オリンパスが2020年3月に配信したニュースリリース「国内初のディープラーニングによる大腸内視鏡病変検出用AI技術、AIIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN-EYE」を発売」から

 このほか富士フイルム(大腸がん)、国立がん研究センターとNECの共同研究グループ(大腸がん)、コニカミノルタ(肺がん)、エルピクセル(脳動脈瘤)などがAI搭載の解析ソフトウェアを開発し、発売した。詳しくはロードマップ(書籍)本体の一覧表(45ページ)を参照されたい。

(次回に続く)

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