キヤノン、耐久性に優れた量子ドットインクを開発:量子ドットに保護層を形成
キヤノンは、ペロブスカイト構造の「量子ドットインク(ペロブスカイト量子ドットインク)」を開発し、実用可能な耐久性があることを実証した。8K対応の量子ドットディスプレイなどに適用可能だという。
色純度や光の利用効率を維持しつつ、T90=約1万時間を達成
キヤノンは2023年5月、ペロブスカイト構造の「量子ドットインク(ペロブスカイト量子ドットインク)」を開発し、実用可能な耐久性があることを実証したと発表した。8K対応の量子ドットディスプレイなどに適用可能だという。
ペロブスカイト量子ドットは、色純度と光の利用効率が高く、ディスプレイに応用すれば高輝度で広色域、高解像度の製品を実現できるといわれている。ところが、実用化に向けては「耐久性」が課題となっていた。
そこでキヤノンは、プリンターのインクやトナーの開発で培った技術を応用し、ペロブスカイト量子ドットに保護層を形成した。これによって、色純度や光の利用効率を維持しつつ、T90(1000nitの青色光照射条件下において、輝度が初期の90%になるまでの時間)が約1万時間という実用可能な耐久性を備えた「ペロブスカイト量子ドットインク」の開発に成功した。
開発したペロブスカイト量子ドットインクは、ITU-R BT.2020の色域に対し94%(InP量子ドットインクは88%)をカバーできるという。その上、画素サイズが小さくても効率よく光を変換できるため、8K対応のディスプレイにも対応することが可能である。光の利用効率が高いため、量子ドットを用いた現行の有機ELテレビに適用した場合、消費電力を約20%削減できる見通しである。
量子ドットを用いた有機ELディスプレイは、量子ドットによって青色の光源を赤色と緑色に変換する。このため、白色光源を用いたディスプレイに比べ、色純度の高い赤色と緑色を得られるという。また、量子ドットの組成と粒径によって、発光波長(色)を制御できる。
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