キヤノン、監視用途向けCMOSセンサーを開発:ダイナミックレンジは148dB
キヤノンは、監視用途向けでは業界最高レベルのダイナミックレンジを実現した裏面照射積層型CMOSイメージセンサーを開発した。明暗差が大きい撮影環境でも、画面の領域ごとに適切な露光時間を自動で決めて撮影する。このため、移動する被写体でも高い精度で認識することができるという。
領域ごとの明るさに応じ、適切な露光時間を自動で決定
キヤノンは2023年1月、監視用途向けでは業界最高レベルのダイナミックレンジを実現した裏面照射積層型CMOSイメージセンサーを開発したと発表した。明暗差が大きい撮影環境でも、画面の領域ごとに適切な露光時間を自動で決めて撮影する。このため、移動する被写体でも高い精度で認識することができるという。
新たに開発した裏面照射積層型CMOSイメージセンサーは、1.0型で有効画素数が約1260万画素(4152×3024画素)である。ダイナミックレンジは148dBで、約0.1ルクス(満月の夜程度)から、約270万ルクスまでの撮像が可能となった。例えば、地下駐車場出入り口に設置された監視カメラで昼間撮影しても、車両に取り付けられたナンバープレートの情報と運転手の顔を、白飛びや黒つぶれなしで同時に認識することができるという。
広いダイナミックレンジを実現するため、今回は画面を736分割し、各領域の明るさに最適な露光条件を、自動で決める方式を採用した。具体的には、2つ前と1つ前のフレームを比較し、その差分から動体マップを生成。次に、1つ前のフレームで領域ごとに被写体の明るさを認識し、輝度マップを生成する。そして、隣接する領域の輝度差を低減する処理を行ったうえで、動体マップの情報から露光条件を補正。最終的な露光条件を決めて対象フレームの撮像に反映させる仕組みとなっている。
従来のセンサーだと、露光時間を変えて撮影した複数の画像を合成し、1枚の画像を生成するのが一般的である。この方式だと、移動する被写体が重なって写る「モーションアーチファクト」が発生する可能性があり、課題となっていた。
今回開発したセンサーは、モーションアーチファクトが発生せず、移動体の認識精度は向上する。合成処理も不要となり、約1260万画素で毎秒約60フレームの撮像性能を実現できるという。
この他、開発したセンサーは、複数のCPUと専用の処理回路を内蔵しており、領域ごとの露光条件設定を、1フレームの時間内で処理することができる。撮影の環境や用途に応じた撮影条件に変更することも可能である。
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