産総研、次世代コンピューティング基盤戦略を策定:日本が取り組むべきHW開発戦略とは
産業技術総合研究所(産総研)エレクトロニクス・製造領域およびTIA推進センターは、次世代コンピューティングのハードウェア開発において、日本が取り組むべき戦略を策定し、その概要を公開した。
「グリーンサステナブル半導体製造技術検討会」を設置
産業技術総合研究所(産総研)エレクトロニクス・製造領域およびTIA推進センターは2022年6月、次世代コンピューティングのハードウェア開発において、日本が取り組むべき戦略を策定し、その概要を公開した。この中で、実世界エッジコンピューティングと超分散コンピューティングの戦略の重要性を示した。また、製造技術の体系的構築に向けた「グリーンサステナブル半導体製造技術検討会」を設置し、活動を始めた。
産総研は、次世代コンピューティング基盤開発拠点(以下、拠点)を設け、2021年3月より活動を始めている。この中で、東京工業大学の益一哉学長と産総研の金山敏彦特別顧問を共同座長とする戦略会議において、具体的な検討を行ってきた。そして今回、「次世代コンピューティング基盤戦略」(以下、戦略)として第一版をまとめ、その概要を公開した。
「戦略」では、3つの目標とこれらを支える設計・試作・評価拠点および人材育成について定めた。具体的な戦略目標としては、「実世界エッジコンピューティングの総合的な強化」、半導体材料や製造装置など、日本の技術や産業の強みを生かす「超分散コンピューティングに関わるチョークポイント技術の強化」および、エネルギー・資源・環境問題に対応するための「グリーンサステナブル半導体製造技術の体系的構築」を掲げた。
特に、グリーンサステナブル半導体製造技術の体系的構築では、「半導体製造におけるカーボンフットプリントに関する指標を拡張し、グリーンサステナブルの視点を取り入れながら技術の高度化を進める指標の構築をめざす」ことで、新たな付加価値を示す方針である。
具体的な活動に向け、戦略会議のもとに民間企業などがメンバーとなって「グリーンサステナブル半導体製造技術検討会」を設置した。立ち上げ時の活動メンバーはキヤノン、島津製作所、SCREENセミコンダクターソリューションズ、大日本印刷、東京エレクトロン、堀場エステック、ロームの民企業間7社と東京工業大学、産総研で構成されている。検討会は今後、活動に興味を持つ企業や大学などのメンバーを新たに募集し、増員していく予定である。
なお、次世代コンピューティング基盤開発拠点は、2回目となるシンポジウムを2022年7月29日にオンラインで開催する。参加登録は拠点のウェブページ上で受け付けている。
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