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海中音響通信技術で300m/1Mbpsの無線伝送を実現テッポウエビの「鉄砲」無害化

NTTドコモは「ワイヤレスジャパン」(2023年5月24〜26日/東京ビッグサイト)に出展し、海中ドローンや空飛ぶ基地局「HAPS」に関する無線技術を展示した。

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 NTTドコモは「ワイヤレスジャパン」(2023年5月24〜26日/東京ビッグサイト)に出展し、水中ドローンの無線制御実現に向けた海中音響通信技術や、空飛ぶ基地局「HAPS」のシミュレーション技術などを展示した。

独自技術で従来の10倍高速な通信を実現

 同社の海中音響通信は、時空間等化技術や環境雑音耐性向上技術を用いることで、既存技術に比べて10倍高速な通信が可能になっているという。時空間等化技術は、地面や海面から反射して遅れてやってくる音波(遅延波)からの影響を除去する技術。環境雑音耐性向上技術はテッポウエビによる“鉄砲”(テッポウエビが威嚇などのためにハサミを鳴らして出す破裂音)など、海中のインパルス性雑音の影響を抑圧する技術だ。実証実験では、浅海域の水平距離300mで1Mビット/秒の無線伝送に「世界で初めて」(同社)成功したという。

開発した水中ドローン
開発した水中ドローン[クリックで拡大]

 海洋資源調査や海中設備点検を行う場合、職業ダイバーは人数も少なく、高齢化が進んでいるため、現在は水中ドローンの活用が増えている。また、水中ドローンを海中で制御する場合、ケーブルを用いる有線通信では、無線通信による制御技術の開発が進められている。

 無線での通信方法として、電波は海中での伝送距離が短く、光は海水の濁りの影響を受けるため、音波を使った無線通信が検討されている。しかし、音波は、電波や光を使った通信に比べて低速で、海中では陸上移動通信と比較して約20万倍低速になる遅延波の影響を受けるため、高速かつ安定した通信が難しいという課題があった。

海中探査のイメージ
海中探査のイメージ[クリックで拡大]

 同社担当者は、今後の課題について「通信距離の延長が1つの課題だ。水中ドローンは、音響通信装置から約250〜300mの距離まで移動できるが、より遠い/深い場所の探索には距離を延ばす必要がある。また、音響通信装置と水中ドローンの間に岩や氷などの障害物があった場合は通信が難しいため、音波の中継地点を海中に設置し、障害物をう回して通信できるような方法も検討していく」と語った。

2025年度中のHAPS利用開始を目指す

 NTTドコモは、空飛ぶ基地局「HAPS(High Altitude Platform Station)」に関する取り組みも展示した。

 HAPSとは、成層圏に飛行させた航空機などの無人機を通信基地局のように運用し、広域のエリアに通信サービスを提供するシステムの総称だ。山間部などの通常では電波の届きにくい地域や、災害時にも津波や地震の影響を受けない通信手段として、開発が進められている。

 HAPS開発にはNTTドコモを含む複数社が共同で取り組んでいて、機体は欧州の航空宇宙企業であるAirbusの技術を使用している。HAPSとの中継システムは、NTTとスカパーJSATの合弁会社Space Compassが構築し、NTTドコモは、HAPSを活用する場合のシミュレーション技術を開発している。

開発したHAPSのシミュレーション技術
開発したHAPSのシミュレーション技術[クリックで拡大]

 NTTドコモのシミュレーションでは、仮に日本全土の通信をHAPSのみで賄う場合、「約70台の機体を飛ばす必要がある」(担当者)という。実際は、現状の通信サービスを併用するため、日本全土をHAPSで賄う必要はない。一方、既存の通信サービスを併用する場合、地上の電波とHAPSからの電波が干渉しあってしまうため、HAPSからの電波は、狙った地域にのみ届ける必要がある。NTTドコモは、独自のシミュレーション技術を開発することで、実機を飛ばす実験の回数やコストを減らしながら、HAPSサービスが開始された場合の最適な電波伝送方法を研究している。

日本全土をHAPSの通信で賄う場合のイメージ
日本全土をHAPSの通信で賄う場合のイメージ[クリックで拡大]

 同社担当者は、「HAPSの活用に当たり、技術に関する研究開発はもちろんだが、HAPSの電波伝送で使用する通信帯域がまだ割り振られていないことや、空の使用に関する法律が定まっていないという課題もある。国や関係団体にも働きかけながら、2025年までに、HAPSを使った何かしらのサービス提供を目指している」とコメントした。

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