EU、半導体投資への最大1兆2000億円の政府援助を承認:14カ国の68プロジェクトに
欧州委員会が加盟14カ国による、半導体の研究開発プロジェクトへの最大81億ユーロの政府援助を承認した。137億ユーロの民間投資も見込んでいて、プロジェクトへの総投資額は218億ユーロを超えるという。
欧州委員会(EC)は2023年6月8日(ベルギー時間)、ドイツやフランス、イタリアなどの加盟14カ国による、半導体の研究開発プロジェクトへの最大81億ユーロ(約1兆2100億円)の政府援助を承認したと発表した。この公的支援によってさらに137億ユーロの民間投資を見込んでいて、プロジェクトへの総投資額は218億ユーロを超えるという。
今回の発表は、ECが国家補助規制に基づき、最新のマイクロエレクトロニクスと通信技術に関する研究、革新およびバリューチェーン全体における最初の産業展開を支援する「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」を承認したというもの。これは、オーストリア、チェコ、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、マルタ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スペインの加盟14カ国が共同申請したプロジェクト群だ。
ECは同プロジェクトについて、「材料やツールからチップ設計や製造プロセスまで、バリューチェーン全体にわたってマイクロエレクトロニクスと通信技術を対象とした研究開発プロジェクト」と説明。センサー、高性能プロセッサ、AI(人工知能)向けを含むマイクロプロセッサ、アクチュエーター、安全なデータ交換のための通信手段などの分野で大幅な改善を可能にするテクノロジー開発に向けた、56社の68プロジェクトが実施される。
また、68のプロジェクトの中には、ノルウェーおよび加盟国5カ国(ベルギー、ハンガリー、ラトビア、ポルトガル、スロベニア)を含む30以上の大学/研究機関/企業などがエコシステムの一端を担うものもある他、600の間接パートナーも参加している。
同プロジェクトを通じた最初の新製品は、早ければ2025年に市場に投入される見込みで、プロジェクト全体の完了は2032年を予定。約8700人の直接雇用および、さらに多くの間接雇用が創出されることが期待されるという。
ECは2030年までに、世界の半導体生産に占める欧州のシェアを、20%にまで引き上げるという目標を掲げ、官民あわせて430億ユーロを投じる欧州半導体法を発表。2023年4月には、欧州理事会と欧州議会が同法案について暫定合意している。EC委員(域内市場担当)であるThierry Breton氏は、「今回のIPCEIは、欧州半導体法が材料から設計、装置から高度なパッケージングに至るまで、欧州の半導体バリューチェーン全体において官民による多大な投資を既に引き起こしていることを示す新たな事例だ。これらのプロジェクトは、欧州における将来の生産施設の種をまくものであり、欧州半導体法のもとで初の試みとしての支援を受けることができる」とコメントしている。
これまでにInfineon TechnologiesやBosch、STMicroelectronics、GlobalFoundriesなどが欧州内での大型投資を発表している。
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