2023年は「802.11ah元年」、普及状況と課題を聞いた:商用化開始から約9カ月
2022年9月、電波法令改正に伴い、国内における920MHz帯を使用するLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格「IEEE 802.11ah」の商用化が解禁された。国内利用に向けた活動を推進するAHPCに現在の普及状況を聞いた。
AHPC(802.11ah推進協議会)は、「ワイヤレスジャパン」(2023年5月24〜26日/東京ビッグサイト)に出展し、2022年9月の電波法令改正に伴い商用化が始まった920MHz帯を使用するLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格「IEEE 802.11ah(以下、802.11ah)」のユースケースや、対応製品を展示した。
AHPCは2018年11月、802.11ahの国内利用実現に向けて、56の企業および団体が集まって発足した協議会だ。協議会会長には、無線LANビジネス推進連絡会の元会長である小林忠男氏が就任。発足メンバーには、通信キャリアではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクと大手3キャリアが並ぶ。機器メーカーやシステムインテグレーターとしてはシスコシステムズ、日本HP、パナソニック、富士通、横河電機などが名を連ねている。
802.11ahの活用は、「まだまだ手探りの状況」
今回、ワイヤレスジャパンのAHPC出展ブースにて、同協議会 事務局長の松村直哉氏に、2023年5月末現在の802.11ahの普及状況を聞いた。
――802.11ahの普及率/現状はいかがでしょうか。
松村直哉氏 正直、まだまだこれからだ。802.11ahに興味を示す企業/団体は多いが、利用者側も、提供者側も活用のイメージがぼんやりしている印象だ。
802.11ahは、伝送距離が数百〜千メートルまでと、かなり遠くまで電波を飛ばすことができる。また、他のLPWAでは実現できない1Mビット/秒相当の通信が可能だ。例えば、害獣監視カメラで撮影した映像を伝送する時、とてもくっきりした映像とはいえないものの、どんな動物(イノシシ、鳥など)が侵入してきたかを確認するには困らないレベルの解像度の映像を伝送できる。
802.11ahが解禁された2022年は、各社が構想段階にとどまっていた。しかし、2023年は、802.11ahに対応した製品がやっと出てきたので、2023年が「802.11ah元年」といえるだろう。
――普及における課題は何でしょうか。
松村氏 802.11ah対応製品は、出てきたばかりということもあり、価格が高い。時間の経過と共に価格が落ち着けば、利用してみようと考える企業/団体も増えるだろう。
また、802.11ahの活用は、アプリケーションも含めて手探りで進んでいる。普及には、利用者に活用のイメージをよりしっかりと持ってもらうことが大切だ。現状では、農業の無人トラクター制御や害獣監視、ドローン制御などに活用できると考えているが、他にも工場や学校など、さまざまな場所で活用できるだろう。
動体検知のデモも展示
会場では、802.11ahを使った動体検知デモが展示された。デモでは、烏の置物や人物をカメラで認識/撮影し、撮影した映像を802.11ahを介して転送、モニターに映し出していた。筆者の主観では、置物のような静止しているものの映像はもちろん、人流などの動いているものについてもしっかりとカメラで認識し、それがどんな形なのかも問題なく認識できるレベルだと感じた。
松村氏は「ワイヤレスジャパンには2022年、2023年と出展している。2022年は、802.11ahの概念的な内容をメインにした『静的な』展示にとどまった。しかし、2023年は、実際にデモを展示するなど、『動的』な展示ができるようになった。今後も展示会への出展やセミナーの開催などを通じて、802.11ahの活用を推進していく」と語った。
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