自動運転の成功の鍵は「あまり遠くを見すぎないこと」:現実的なところから始めるのが、結局は近道に(3/3 ページ)
完全な自動運転――。その響きは魅力的ですが、その実現には依然としていくつものハードルがあります。では少しでも実用化に近づくにはどうすればいいのでしょうか。その答えは「遠くを見すぎないこと」です。
自動運転の現実に即したマーケティングが今日の利益につながる
「将来実現できるかもしれないこと」を強引に推し進めるよりも、「今できること」に重点を置くことで、自動車業界は消費者の期待を裏切らずに済むはずです。自動運転には高い関心が寄せられていますが、技術が追い付かなければ、消費者の心は離れてしまいます。完全自動運転車の“誇大宣伝”は、製品の販売促進に寄与するどころか、結果的に多くの消費者を失望させ、自動運転車への関心が薄れてしまう恐れがあります。
「今できること」の一例が、高速道路やバイパス道路、ジオフェンスで囲まれた一部エリアにおけるレベル2および3の自動運転です。これは、既に経済的にも技術的にも実現可能です(図2参照)。自動運転車市場はまず、一般消費者が利用できる妥当な価格で高速道路走行シナリオを実現することに注力すべきです。高速道路の補修工事、高速入口/出口ランプでの運転、厳しい天候条件等のコーナーケースへの対処は、集中的な取り組みによって、比較的すぐに解決することができます。高速道路での完全自動運転では、車線が不明瞭あるいは引かれていないときの対処、停止している緊急車両の検知、事故全般の回避といった問題も克服する必要があります。
次の段階
自動運転の進化は段階的に進むとみられます。次の段階では、信号に加え、場合によっては二輪運転者や歩行者などの可変要因が絡んでくるバイパス道路での自動運転に対応した機能的向上が見られるはずです。
消費者は、自動車メーカーの売り上げを大幅に伸ばすことになるかもしれないこうした短期的な改良を歓迎するでしょう。駐車の完全自動化は既に実現に近づきつつあり、既存の駐車場の整備も容易です。ショッピングセンターのそばに停めて自分はそこで降り、あとは駐車場の空きスペースを見つけるようクルマに命令する――。そうできたらいいですよね。買い物が終わったら、運転者はクルマを呼び寄せて迎えに来させることもできるかもしれません。こうした機能は安全性と全体的なドライビング・エクスペリエンスを向上させます。空港その他への移動手段の駐停車にも応用できます。完全自動シャトルは今後数年で実現されるでしょう。
ジオフェンスを利用した自動運転も次の段階で実現可能です。自動運転で走行できるのが特定の道路に限定されさえすれば、多くの問題や安全上の潜在的コーナーケースが取り除かれます。歩行者と完全自動運転車のみの通行が許可される都心エリアをつくるのも良いでしょう。ジオフェンスを利用した自動運転は高齢者コミュニティーでも活用できる可能性があります。これらのエリアで成功を収めることが、消費者、規制当局、エコシステム・パートナーから信頼を得ることにつながるでしょう。混雑する市中での自動運転はハードルが高く、実現までにはまだ時間がかかりそうです。現実的な自動運転ロードマップはコネクテッドカー・ソリューションに落ち着くはずですが、それでも予想より何年も先になるでしょう。
未来の自動運転技術を実現しようとするエンジニアらの取り組みは素晴らしく、極めて重要です。しかし同時に、現実を見据え、完全な自動運転ソリューションは複雑でコストが掛かり、かなりハードルが高いということを理解しておく必要があります。自動運転はいずれ実現するでしょう。しかしコネクテッドカーと輸送ネットワークの世界を早く実現したいなら、現実的なエンジニアリングとマーケティングを行い、できることから着々とやっていくのが、一番の近道になるのではないでしょうか。
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