強まる自動車の環境規制、先進国は2050年のカーボンニュートラルが共通目標:福田昭のデバイス通信(410) 2022年度版実装技術ロードマップ(34)(1/2 ページ)
前回に続き、第2章第5節の第3項(2.5.3)「電動化技術」の概要を紹介する。その中から、世界における自動車の環境規制動向に相当する部分を解説する。
自動車の環境規制が自動車の電動化を促す
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介してきた。
本シリーズの第30回からは、第2章第5節(2.5)「モビリティー」の概要をご説明している。第2章第5節(2.5)「モビリティー」は、第1項(2.5.1)「はじめに」、第2項(2.5.2)「自動運転と遠隔操作」、第3項(2.5.3)「電動化技術」、第4項(2.5.4)「EMC・ノイズ対策」、第5項(2.5.5)「日本のモビリティー産業界への提言」で構成される。前回から第3項(2.5.3)「電動化技術」の内容をご紹介している。
前回は主に、電動車(電動自動車)の種類(2.5.3.1の(1)に相当する部分)を簡単に説明した。今回は、世界における自動車の環境規制動向(2.5.3.1の(4)に相当する部分)を述べる。
欧州、米国、日本は2050年、中国は2060年のゼロエミッションを目指す。
世界の主要国・地域ではそれぞれ、独自に自動車の環境規制ロードマップを打ち出している。欧州、米国は2050年のカーボンニュートラル(ゼロエミッション)達成を、中国は2060年のカーボンニュートラル達成を目標とする。ただし、その道程と内容は各国・地域によってかなり違う。
欧州は「BEV(Battery Electric Vehicle)」に代表されるZEV(セロエミッション自動車)の普及を基本的な方針として据える。ハイブリッド自動車(ハイブリッド車)はZEVに含めていない。2030年にはZEV乗用車3000万台が域内を走行していることを前提に、充電インフラストラクチャの整備を進めている。環境負荷(温室効果ガス排出量)の評価方法としては、ライフサイクル評価(LCA)を導入する方針である。
米国連邦政府は2030年に新車販売数の半分以上をゼロエミッション車(プラグインハイブリッド車を含む)とする目標を打ち出した。州政府ではカリフォルニア州が最も積極的で、2035年には新車販売をゼロエミッション車に限定すると発表している。
日本は2030年半ばまでに、新車販売を全て電動車(ハイブリッド車を含む)にすることを検討中である。温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の換算方法としては「WtW(Well to Wheel)」(後述)を2030年度の乗用車燃費規制に導入する。
中国は2030年にGHGの排出量をピークアウトさせる。2035年の新車販売は半分が「新エネルギー車(NEV)」、残りの半分が内燃機関(ICE:Internal Combustion Engine)車とする。ただしICE車は全て、ハイブリッド車となる。
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