NEC、クラウド対応型5Gコアネットワークを開発:データ転送量は従来の2.8倍に
NECは、携帯電話網の制御などを行うソフトウェア「5Gコアネットワーク(5GC)」を開発した。クラウド技術を適用し、消費電力当たりのデータ転送量を従来の2.8倍とした。
「大容量化」と「省電力化」を両立
NECは2023年8月、携帯電話網の制御などを行うソフトウェア「5Gコアネットワーク(5GC)」を開発したと発表した。クラウド技術を適用し、消費電力当たりのデータ転送量を従来の2.8倍とした。
NECは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が取り組む「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、「ポスト5G時代のモバイルコアの実現に向けた高信頼性・柔軟性を両立するクラウド技術拡張に関する研究開発」を行ってきた。
こうした中で今回は、2つの成果が得られたという。1つはマイクロサービスアーキテクチャなどのクラウド技術を用いることで実現した「柔軟性と高信頼性を併せ持つ5GCの開発」。もう1つはハードウェアアクセラレーター技術を活用した「高速で省電力のデータプレーン装置開発」である。
柔軟性と高信頼性を併せ持つ5GCの開発では、「コンテナ化」技術や「分散ソフトウェア」技術、それぞれ独立したサービスを組み合わせてアプリケーションを構成する「マイクロサービスアーキテクチャ」といったクラウド技術を用い、サービスや通信処理をマイクロサービスの単位に分割する仕組みを導入。これによって、ネットワークリソースアサインの機敏性や柔軟性を高めた。
マイクロサービス単位でシステムの配備や運用が可能になったことで、モジュールの新設や増設に要する時間は、従来の10分の1に短縮できるという。さらに、オープンAPIを搭載しているため、外部のネットワークシステムからアクセスし、ネットワークの設定変更や制御を行うことができる。
また、高速で省電力のデータプレーン装置を実現するために、仮想化技術としてコンテナ技術を活用し、大容量化と省電力化の両立に取り組んだ。大容量化技術については、CPUなどの利用効率を改善し、パケット転送効率を向上させた。さらに、ソフトウェア処理を汎用ネットワークカードへオフロードする技術を開発した。これらの技術により、消費電力当たりのデータ転送量で従来に比べ最大2.8倍の大容量化を達成したという。
省電力化技術については今回、トラフィックの時間変動に合わせハードウエアリソースを動的に制御する負荷判定技術を開発し、省電力化を実現した。具体的には、トラフィックの閑散時は、消費電力を従来に比べ最大20%も削減することが可能となった。
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