EUV光源の変換効率(理論値)、上限は10.3%に:理論上限を高める指針も明らかに
宇都宮大学や米国パデュー大学、北海道大学および、広島大学の共同研究グループは、極端紫外(EUV)光源の変換効率(理論値)について、上限が10.3%であることを示し、そのための指針も明らかにした。
プラズマスケール長、CO2パルス持続時間を調整
宇都宮大学や米国パデュー大学、北海道大学および、広島大学の共同研究グループは2023年9月、極端紫外(EUV)光源の変換効率(理論値)について、上限が10.3%であることを示し、そのための指針も明らかにした。
最先端半導体の製造工程では、微細な回路パターンを転写するために、波長13.5nmのEUV光を用いた露光機が導入されている。ここで重要となるのがEUV変換効率で、その理論限界はこれまで7〜8%が上限といわれてきた。しかし、理論上限がどこまで向上するかは明確にされていなかったという。実際のEUV露光機におけるEUV変換効率は、約5〜6%というのが現状である。
共同研究グループは今回、現行露光機のEUV光源方式を理論的に模擬し、大阪大学のスーパーコンピュータ(SQUID)で2次元放射流体シミュレーションを行い、プラズマの初期条件や炭酸ガス(CO2)レーザーの照射条件を細かく検討した。
具体的には、レーザースポット径やプラズマスケール長、CO2パルス持続時間などを調整し、EUV変換効率やスペクトル純度への影響を調べた。これらの研究により、EUV変換効率を10.3%まで向上させるためのプラズマ生成条件を見出すことに成功した。
今回の研究成果は、宇都宮大学学術院(工学部基盤工学科)の東口武史教授、米国パデュー大学極端環境物質センターの砂原淳主任研究員、アーメドハサナイン教授、北海道大学大学院工学研究院の富田健太郎准教授、広島大学大学院先進理工系科学研究科の難波愼一教授ら共同研究グループによるものである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 京大ら、イッテルビウム化合物で中性準粒子を発見
京都大学と広島大学の研究グループは、イッテルビウム化合物「YbCuS2」の非整合反強磁性秩序相に、電気的中性な準粒子が存在していることを発見した。次世代量子コンピュータや省エネルギーメモリデバイスなどへの応用が期待できるという。 - EUV適用1γ DRAM、広島工場では2026年に生産開始
Micron Technologyは2023年5月22日、EUV(極端紫外線)リソグラフィ適用の1γノードDRAMの生産発表に併せて広島工場で記者会見を実施した。 - 半導体ポリマーを結晶化、OPVの変換効率を約2倍に
広島大学と京都大学および、高輝度光科学研究センターらによる共同研究チームは、半導体ポリマーの結晶化により、塗布型有機薄膜太陽電池(OPV)の変換効率を、従来に比べ約2倍に高めた。有機半導体の結晶化を促進させるメカニズムも解明した。 - 広島大ら、非鉛系圧電セラミックス材料を合成
広島大学と九州大学、山梨大学の共同研究グループは、優れた強誘電性と圧電性が得られる非鉛系圧電セラミックス材料の合成に成功した。圧電性は従来のPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に匹敵するという。 - 全頂点にフッ素原子が結合した立方体型分子を合成
東京大学とAGCの研究グループは、広島大学および京都大学との共同研究により、全ての頂点にフッ素原子が結合した立方体型分子「全フッ素化キュバン」の合成に成功し、その内部空間に電子が閉じこめられた状態を初めて観測した。 - 広島大、接合界面にスピン偏極電子状態の存在確認
広島大学は、放射光を活用した角度分解光電子分光実験により、クロム酸化物「Cr2O3」とグラフェンの接合界面にスピン偏極した電子状態が存在することを確認した。反強磁性体磁気メモリとスピントランジスタを直結した新しいデバイスの開発が期待される。