組み込みセキュリティを強化したIoT向け無線モジュール:EUのセキュリティ基準を見据え(2/2 ページ)
ドイツのWürth Elektronikは、新たなパートナーである英国のCrypto Quantiqueと提携し、セキュリティを強化したワイヤレスモジュールを2023年後半にリリースする。IoT(モノのインターネット)で課題となるセキュリティに対応する製品になるという。
IoTセキュリティをより簡単に
ロンドンに拠点を置くCrypto Quantiqueは、自社について、「ソフトウェアとハードウェアを包括する、世界で最も安全なエンドツーエンドのIoTセキュリティプラットフォームを提供する企業」と説明している。同社は、「QuarkLinkは独立したプラットフォームであるため、ネットワーク事業者はIoTセキュリティをより簡単に展開および管理できる」と述べている。
Hartley氏は、「QuarkLinkは、2024年のEC指令に対応するために、ベンダーの数やデバイスの数に関係なく、そして、クライアントがプラットフォームを変更するかどうかに関係なく、各デバイスの全ライフサイクルにわたってエンドツーエンドのセキュリティを提供する」と述べ、「他のプラットフォームでは、別のホストに変更するのは非常に手間がかかる」と付け加えた。
同氏は、「顧客はQuarkLink対応デバイスを購入し、接続や登録、認証、オンボード、セキュリティ保護の全てを1カ所で、数回のキー操作だけで行うことができる。あらゆるデバイスをAWS(Amazon Web Services)からMicrosoft Azureに移行することも、1カ所でできる。QuarkLinkは一定レベルのホスティングの自由度と制御を実現し、顧客が以前使用していたリソースを使用して、より戦略的な問題に取り組めるようにする」と述べている。
Madanahalli氏は、「QuarkLinkに対応したWürthのモジュールは、顧客の生産プロセスに応じて、数分単位ではなく数ミリ秒単位で簡単に拡張してクラウドに接続できる」と述べている。
ドイツに拠点を置くWürthは、電子および電気機械部品を製造し、ワイヤレス通信用モジュールとIoTアプリケーション向けセンサーの幅広いポートフォリオを提供している。同モジュールは、Bluetooth、Wi-Fi、ワイヤレスM-Bus、Wirepas Mesh、さらに独自の無線プロトコルとの安全な接続をサポートする。同社は、IoT製品をより迅速かつ高いコスト効率で開発することを目指して、さまざまなコンポーネントと開発サポートを提供している。
Madanahalli氏は、「Würthの主な差別化要因には、高レベルのサービスと規格に対する事前認証、顧客による独自設計の認証を支援する取り組み、小規模な運用のサポートなどがある」と述べている。
同氏は、「当社は市場のサービスリーダーになることに焦点を当てている。ドイツには、個人でエンジニアリングオフィスを運営する顧客がたくさんいる。当社はそうした顧客も他の顧客と同じようにサポートしている。顧客のところに直接出向いて、ファームウェアのカスタマイズや、組み込みIoTデバイスの開発に必要なあらゆるツールの提供も行っている」と述べている。
Madanahalli氏は、同モジュールは2023年後半に市場に投入する予定だ。
同モジュールは、製造業だけでなく、農業や医療分野からも関心が寄せられているという。「デバイスの種類としては、安価なセルラーデバイスから電気自動車の充電器まで多岐にわたる」Hartley氏は述べている。
Würthのワイヤレス接続およびセンサー担当バイスプレジデントを務めるOliver Opitz氏は、「われわれは常に、性能と信頼性、セキュリティを損なうことなく、開発コストと作業負荷を削減し、顧客に最高のIoTテクノロジーを提供することに注力してきた。ここで重要な新しいビルディングブロックとなるのがQuarkLinkだ」と語った。Crypto QuantiqueのCEO(最高経営責任者)であるShahram Mossayebi氏は、「QuarkLinkで製品を拡張することで、これらの製品の魅力も高まる。ネットワークに対する脅威がかつてないほど高まっている今、セキュアなIoTネットワークの実装と管理がより迅速かつ容易になる」と述べた。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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