「SMICの5nmプロセスへの道筋は良好」と観測筋:米国の対中戦略を揺るがす躍進(3/3 ページ)
中国のSMICは、今後数年以内に5nm以下の微細プロセスによる半導体チップ製造を実現し、再び米国に対抗する可能性があるという。業界観測筋が米国EE Timesに語った。
米国の規制措置が中国の動きを阻止できるのか
米国議会は最近、HuaweiとSMICに対する包括的禁止措置を新たに提案したところだ。
米議会の対中特別委員会長 を務める米下院議員Mike Gallagher氏(共和党、ウィスコンシン州)は2023年9月、「商務省は、HuaweiとSMICに対する全ての技術輸出を禁止すべきだ」と述べている。
Triolo氏は、「米当局は、SMICがKirin 9000sを製造したことで米国の域外輸出規制に違反しているということを確実に証明する方法を見極めようと、躍起になっている」と述べる。
「Kirin 9000sの製造に米国の技術が使われたことを証明するには、技術分解では不可能だ。半導体製造が複雑であることや、米国技術の正確な構成要素の定義が曖昧であること、技術/製造プロセスは急激に進化するものであることなどを考慮すると、商務省が外国直接製品ルール(FDPR:foreign direct product rule)の違反をどのように判断するのかについては、常に問題となっていた」(Triolo氏)
「米当局がSMIC/Huaweiに対するさらなる措置を検討する可能性があるが、両社は既にエンティティリストに掲載されていて、FDPRの規定対象となっていることから、米財務省の制裁措置という“最終兵器”が残されている」(Triolo氏)
また、同氏は、「こうした方向へのいかなる動きも、米中関係に大きな悪影響を及ぼすことになるだろう。米中関係は、米国政府高官が4度にわたり中国政府を訪問したことで、幾分改善が見られていた」と付け加えた。
Thurston氏は、「商務省の規制措置によって中国の動きをうまく阻止できるのか、という点に関しては、私の答えは『NO』だ」と述べる。
域外輸出規制の正当性は
Thurston氏は、「中国の半導体製造能力は、米国政府ではまだ十分に解明されていない。中国の技術力を実際にどのような方法で推測することができるのか、誰もよく分かっていない上に、米国企業はこれまで、ろくな成果を上げていない」と述べる。
Triolo氏は、「SMICとHuaweiは、SMICのKirinチップを搭載したHuaweiのスマホ『Mate 60』を製造することで、国家安全保障の問題を回避した」と述べる。
米国家安全保障担当補佐官であるJake Sullivan氏は、可能な限り多くの技術世代で中国が米国に後れを取っている状態を維持する、「高い壁、狭い庭(high walls, small yard)」戦略を掲げてきたが、それが現在課題に直面している。
「米当局は、輸出規制は国家安全保障関連の問題に辛うじて対応できていると強調しているが、Mate 60のような消費者向けスマホが国家安全保障上の懸念にどう値するのかを明確に説明している当局者は一人もいない。FDPRのように、ある中国企業が別の中国企業に製品を販売することを制限する域外輸出規制が、国際法の観点からの厳密な調査に耐え得るのかどうかは不明だ」(Triolo氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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